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連載文春図書館 著者は語る

ブームに火をつけた『嫌われる勇気』の第2弾

『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII』 (岸見一郎・古賀史健 著)

source : 週刊文春 2016年3月24日号

genre : エンタメ, 読書

右・きしみいちろう/哲学者。1956年生まれ。京都大学大学院博士課程満期退学。著書は『アドラー心理学入門』など多数。 左・こがふみたけ/フリーランスライター。1973年生まれ。ビジネス・ノンフィクションで活躍。著書に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』。

「20年ほど前、現代思想や哲学の本を読み漁っていたことがあり、そこで岸見一郎先生の紹介するアドラー心理学に出会ったんです。これまで読んできた心理学とまったく違った内容に衝撃を受けました。それからは先生の著作を知人の編集者に配って普及に努め、先生と一緒に本を出す機会をうかがい続けました。私と同じ熱量でぜひ本をと言ってくれる編集者に出会うまで10年かかりましたね(笑)」

 そう語るのは、ライターの古賀史健さん。岸見一郎さんとの共著で2013年に刊行した『嫌われる勇気』は、日本、そして韓国でもそれぞれ100万部を突破、一大ブームを巻き起こした。

「私がアドラーに出会ったころは、フロイト、ユングに並ぶ三大心理学者と称されながらも、知る人ぞ知るという存在でした。アカデミズムよりも、現場での実践の心理学でしたから、格下に見られていた面もありましたね」(岸見さん)

 同書の大きな特色のひとつが、対話形式。青年の語る悩みや疑問に哲人が答えて、理解を深めていく。

「内容は、私と古賀さんの話し合いがもとになっていますが、モデルにしたのは、プラトンが師ソクラテスを描いた“対話篇”です。師匠と弟子とが率直に語り合い、わからないところは聞き返したりと、丁寧に議論しています。アドラー心理学は、タテの関係を否定し、ヨコの対人関係を大切にしますから、この形式はぴったりだと思いました」(同前)

 先月、第2弾『幸せになる勇気』が発売になった。前著では、アドラー心理学に啓蒙され、新しい人生を歩む決意をした青年だったが、3年後、その実践に挫折し、哲人の前にアドラー心理学の激しい弾劾者となって再び現れる。

「いざアドラー心理学を自分で実践しようとすると、必ず困難にぶつかります。たとえば、子どもを“褒めても叱ってもいけない”とか、実際の場でどうなるか不安ですよね。ただの理想論じゃないか、という疑問を持つ人もいると思うんですよ。本書ではそこに応えていこうと思いました」(古賀さん)

 アドラー心理学のカウンセリングでは、トラウマを問題の原因として重要視しないのも特徴だ。

「もちろん、東日本大震災や大津波などは、自分では選ぶことのできない大きな衝撃です。悲しくないはずがない。アドラーも第一次大戦に医師として従軍し、今でいうPTSDについても知っていました。しかしそれでも、人は前を向いて生きていかねばなりません。

 フロイト等の心理学では、そういったトラウマや心の病などを治療して、マイナスからゼロの地点にもっていくことを重視するのに対して、アドラー心理学では、ゼロの先にあるものを追求しようとするところに違いがあります」(岸見さん)

 ゼロの先の追求、つまり幸せになると意識することが、アドラー心理学ではなにより重要だという。

「人間にとって幸福とは何か、そして愛について真剣に向き合って議論している心理学というのは、少ないと思います。本書をきっかけに、皆さんにも照れずに幸福について考えてみて欲しいです」(古賀さん)

「前作にも書きましたが、私たちのすべての悩みは、対人関係から生じてきます。しかし、鳥が空を飛ぶのに空気抵抗が必要不可欠なように、生きる喜び、幸せを感じるためには、その対人関係が必要です。そこに入っていく勇気を、本書を読んで皆さんにもって欲しいと思います」(岸見さん)

アドラー心理学に出会い、新たな生き方を決意した青年は3年後、哲人のもとを再訪し、アドラーの思想はペテンと罵った……。アルフレッド・アドラーの心理学をわかりやすく紹介し、日韓で大ベストセラーになった『嫌われる勇気』の続編。「幸福」、「自立」、「愛」をテーマに青年と哲人は再び激論を交し合う!

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

岸見 一郎(著)

ダイヤモンド社
2016年2月26日 発売

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