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かつてロッテファンから“リーダー”と呼ばれた男は、あの“空耳アワー俳優”だった!

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/01/15
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“リーダー”の文章技術

 前述の用語集にも書いてあった通り、 “リーダー”は「っ」を多用していた。これは独自の感覚から生まれたものだという。

「『っ』が入るとよく言われていましたよね。『っ』が入っていたら僕です。無意識なんですよね。『!』の代わりです。僕としては『!』の前段階が『っ』ですよ。『なんとかだっ』もっと大きくなると『なんとかだ!』という感じで。指摘されてから気がつきました」

 ロッテが勝利した時などは、「っ」がインフレを起こしたかのように使われていた。それも“リーダー”が勝利を喜んでいた証だろう。事実、この速報業務で楽しかったのは勝利の瞬間だったそうだ。

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「勝ったら書く言葉もスラスラと出てくる。負けている時にどうやって前向きに頑張るかの方が大変じゃないですか。勝ってイケイケの時にこっちもノリノリでやれるのが楽しかったですし」

 「っ」以外にも特徴的な言葉がある。それは“リーダー”がロッテファンのことを呼ぶときに使っていた「マリーンズ人」というものだ。例えばロッテが逆転した時などは、「全マリーンズ人総歓喜!」という風に使っていた。このフレーズは、突然思いついたものだという。

「そういう印象に残るフレーズって、その場で思いついたものが多いんですよね。普段からこういう場面ではこういうことを書こうとか、ある程度は用意しておくんですけど、それはあんまり面白くなくて。その時に興奮してバッと書いたものが、後から振り返るといい言葉だったり」

 数々のバラエティに富んだ文面を書いてきた“リーダー”だが、それまで特に文章を書いてきたわけではなかった。しかし速報と役者は似た部分があったと語る。

「速報も役者も表現する仕事じゃないですか。重なる部分があって、楽しかったですよね。あと、僕は『頑張れ』って言葉を禁句にしていたんですよ。『マリーンズ頑張れ』とか『なんとか選手頑張れ』とか。それを禁句にして。すると『頑張れ』に代わる言葉を考えないといけないじゃないですか。そうすると結構色々な表現を考えるし、出てくるので、一個自分を縛ると色々広がっていくんですよね。『頑張れ』って言っちゃうとそれまでなんです」

 その後、2006年に“リーダー”は選手の登場曲やDJの音声を流すPAの仕事に移り、公式サイトからは姿を消すことになった。現在はさらに仕事が変わり、アナウンスやマリンビジョンの映像進行を担当している。業務は変わっても“リーダー”はロッテに関わり続けていた。

 最後に2017年シーズンを最下位で終えたロッテへ、“リーダー”からの時間を超えたメッセージを送りたい。

「何度でも何度でも立ち上がる! マリーンズは何度でも立ち上がる!」(2005年5月17日:広島戦

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