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かつてロッテファンから“リーダー”と呼ばれた男は、あの“空耳アワー俳優”だった!

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/01/15
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 かつて、ロッテファンから“リーダー”と呼ばれた男がいた。

 インターネット掲示板「2ちゃんねる」のプロ野球ファンがインターネット上で作った「2ちゃんねるプロ野球板用語集」には、以下のような記載がある。

「リーダー:ロッテ公式HPのスコア速報担当者(平日限定)。別名・公式タン。
頻繁に語尾に「っ」を付ける独特の口調、また極端なまでの喜怒哀楽の激しさが特徴。
健気なまでに前向きであり、勝ち試合や逆転などの場面では怖ろしくテンションが上がるため、ネガ傾向の強い(筆者注:ネガティブな)実況住民から「ファンの鑑=リーダー」として絶大なる支持を受けている」

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 現在のようにCS放送が普及していなかった時代、ロッテ公式サイトのテキスト速報は試合状況を知るための唯一の手段と言ってもよく、多くのファンが閲覧していた。特に2004年から2005年頃は文面の喜怒哀楽が激しく、ロッテファン以外からの注目も高かった。いくつかその時の文面を挙げると……。

「7番 サブロー サードゴロ。2塁へ送球5→4→3のダブルプレー・・試合終了。がああああぁぁぁ゛・・もうちょっとだったのにぃ・・惜しくも及ばず」(2004年5月11日:日本ハム戦)

「5番 平尾 ショートゴロ、2塁へトスしてアウト! チェンジ。センターへ抜けようというゴロに小坂が飛びつく! 打球の横から疾風のごとく飛び出してくる黒い影、それが小坂誠だ!」(2004年5月26日:西武戦)

「6番 橋本 ライトの右を破るタイムリー2ベースヒット! 福浦ホームイン! 2死2、3塁。ハイパーマリーンズ発動中! 7番 今江 右中間を破るタイムリー3ベースヒット!(センターが捕球)フランコ、橋本続々ホームイン! 2死3塁。マリーンズ祭りだわっしょいしょい! 8番 サブロー レフトフライ。今江残塁でチェンジ。止まらない止められないっ猛打爆発に終わりなし!」(2004年7月3日:ダイエー戦)

 このように選手を褒め称え、勝てば喜び、負ければ悔しがり、それでもファンを鼓舞した“リーダー”は、現在もZOZOマリンスタジアムの放送室で仕事を行なっている。ZOZOマリンスタジアムに響く、男性アナウンスの声の人だといえばピンと来る人もいるのではないだろうか。

 ロッテファンで無い人にも、こういえばわかるかもしれない。“空耳アワー俳優”と。

かつてロッテファンから“リーダー”と呼ばれていた俳優・野田美弘

速報のきっかけと『2ちゃんねる』

 前回は初めて速報を担当された大崎哲也さんへのインタビューを掲載したが、今回は、かつてロッテファンから“リーダー”と呼ばれた人物で、テレビ番組「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)のワンコーナー「空耳アワー」の再現VTRで登場する俳優・野田美弘さん(48)に話を伺った。

 野田さんは放送室で働きながら、俳優としても活動している。他にも映像制作や演出など、活躍の幅は広い。

「僕は19歳から演劇学校に入ったんですね。そこから演劇をやりつつアルバイトもして。そんな時にアルバイト時代、一緒に仕事をしていた大崎さん(前回紹介)からお声が掛かって。それが2001年頃です」

「当初はマリーンズ寄りの速報をするという感じでやっていたんですよね。それがだんだんエスカレートしていって」

 そのエスカレートした文章が、ロッテファンの心を打った。しかし、その文面を考える苦労はあったという。

「大変でしたよね。どう表現したらいいのかという。試合は止まってくれないじゃないですか。気の利いたことを言わなくてもいいんですけど、何かやりたかったんですよね。普通にやっていてもいいんですけど、何かやりたいという気持ちがあって。でも、文章を間違えると『2ちゃんねる』の人たちが指摘するでしょ(笑)」

 野田さんは当時、「2ちゃんねる」でのロッテファンの書き込みを見ていた。

「途中から見るようになりましたね。こういうこと言われてるんだ、とか知って。楽しそうでしたもんね、皆さんで試合を見ながら書き込んでて」

「当時は何人かで速報業務を回していたんですが、もちろんやる人によって文体が違うので。『2ちゃんねる』の皆さんも『今日は違うぞ』とか『土日はこの人だな』みたいな感じでした。シフトがわかっていたようで。僕も“リーダー”と呼ばれていたんですけど(笑)」

 “リーダー”は、あの頃を覚えていた。そして「驚く方もいらっしゃるかもしれませんね」と笑顔を見せた。

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