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松本清張、最後の担当者が明かす『砂の器』“誤記”の真相

「地図と鉄道と松本清張」トークセッション

不注意でした。訂正いたします(松本清張)

田中 それでは、清張先生には誤記はなかったのか、というと、そうとも言えません。

 全集第6巻の月報は、読者からのお便り特集なんですが、読者の方からの質問に対して、著者からのお詫びと訂正が載っています(笑)。

 全集第4巻の『黒い画集』は訂正されています。引き続き、何かお気づきのことがあればお知らせください。

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月報にはしっかり誤記の指摘が

大平原 すみません、はからずもクレーマーみたいになってしまいました(笑)。

 地理学に造詣の深い方なら、方言地理学とか方言周圏論というのをご存じでしょう。京都でできた言葉が、同心円状に広がっていくようなイメージで、アホ・バカ・タワケの分布研究もその一つです。松本清張先生は、この方言周圏論を小説の中に組み込んでいかれたのだとよくわかります。

帝国書院の地図帳を池上さんタモリさんが解説

『松本清張地図帖』(帝国書院編集部 著)
『松本清張地図帖』(帝国書院編集部 著)

赤塚 『清張地図帖』の後半は、中学校の地図帳の復刻版を元に、作品に登場する地名や殺人現場などが示されていますね。地図帳は毎年新しく作られるのに、昭和32年のものを選んだのはなぜでしょうか。

北川 こちらが『点と線』の連載が開始された「旅」の昭和32年2月号です。横浜市立図書館から借りてきました(笑)。『点と線』は歴史的で画期的な作品ですから、その連載開始をひとつの区切りと考えました。

大平原 別の理由として、昭和32年に中学校に入学したのは、ちょうど昭和20年生まれなんですね。本書を編集するにあたっては、戦後初めて生まれた世代に向けて、ありし日のアルバムのように仕上げたいという意図がありました。

『点と線』連載第1回が掲載された「旅」昭和32年2月号 所蔵:文藝春秋資料室

 帝国書院では、復刻版の地図帳を何種類も刊行しています。今までに出したのは、昭和9年、昭和25年、昭和48年のものです。それらと重複しないようにという営業的な戦略もありました。25年や48年の地図帳も面白いんですよ。解説書では池上彰さんやタモリさんも執筆されていて、鉄道については今尾恵介さんが詳しく書かれています。

赤塚 乗り鉄の人間には、清張作品には、今は廃線になった路線が出てくるのも魅力です。読みながら、この路線はどのあたりを通っていたのかなと気になると、『清張地図帖』で確認していました。『清張鉄道』を書くときにも、たいへん参考になりました。