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東スポも朝日も震えた、“巨大すぎるパンダ”報道

東スポも朝日も震えた、“巨大すぎるパンダ”報道

シャンシャンだけじゃない、パンダブーム

2018/01/19
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かわいいが凶暴、朝日と東京新聞の場合

 その勢いは止まらない。なんとプロレスには縁遠い一般紙にも登場。

 昨年12月15日の「朝日新聞」夕刊。

「3メートルのパンダレスラー 根室発 かわいいが凶暴 アンドレザ・ジャイアントパンダ」

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 とでっかく。

《本土最東端、北海道根室市に現れた身長3メートルの「巨大レスラー」が話題を呼んでいる。体重は自称500キロという「アンドレザ・ジャイアントパンダ」。動画配信やプロレス専門誌などで取り上げられ、パンダ誕生でにぎわう東京・上野のイベントにも登場し、ファンの度肝を抜いた。》

2017年12月15日 朝日新聞夕刊

《体に似合わず動きは速いが、巨体をどのように動かしているのかは秘密だ。「凄(すご)いものを見た!」「壮大なスペクタクル」などとSNSで話題となった。》

「東京新聞」でも大きく伝えられた。

「巨大パンダレスラー旋風」(2017年12月28日)

《「得意技は巨体で相手に覆いかぶさる『ジャイアント・プレス』。一見かわいいが性格は凶暴、動きは俊敏。安易に近づかないほうがいい」。新根室プロレス本部長の宮本賢司さん(四四)は真顔で注意を促す。》

2017年12月28日 東京新聞「こちら特報部」

 一般紙らしく「新根室プロレス」の意図も紹介している。

《新根室プロレスは、街を元気づけようと根室市などのプロレス好きが〇六年に結成。メンバーはコンブ漁師、酪農家ら二十四人。宮本さんは「設立十年の昨年、やめようかという話もあった。あと一年やるかとなったところ、彼が参加し、新根室プロレスを救ってくれた」と振り返る。》

 アンドレザ・ジャイアントパンダは地方の街を元気づけ、そればかりかSNSでも火がつき、街や県を超えて人気者となったのである。

ああ、天龍さんが現役だったら……

 これらの記事をみて「でも着ぐるみだろ」「そんなのプロレスラーと呼んでいいのかよ」という感想もあるだろう。プロレス界のレジェンドで2015年まで闘い続けた天龍源一郎さんは「週刊プロレス」で、

《プロレスラーが思ってるほどプロレス界にスターがいないっていう証拠なんだよ。》

《ひと昔前のレスラーの俺からしたら「ふざけんな、コノヤロー!」って言ってテーブルひっくり返してるところだよ。》

 と語っている(「龍魂時評」第92回)。激しく厳しいファイトスタイルを貫いた天龍なら当然の反応かもしれない。

天龍源一郎 ©文藝春秋

 でも一方で私は思ってしまうのだ。

「ああ、天龍さんが現役だったら……。怒りながらも、いや怒っているからこそ、もし実際にアンドレザ・ジャイアントパンダと試合をしたら観客を興奮させる凄い試合をするのでは……」と。天龍源一郎は今でもそんなときめきを抱かせる。

 観客席からすると「プロレスとは多様性」である。異なる価値観を体験できるのがプロレスの大きな魅力だ。ご意見番(天龍)の言葉をきっかけに、あーでもないこーでもないとそれぞれ語れるのがまさにプロレスの醍醐味なのである。

「客を呼べる」のもレスラーとしての重要な条件ならアンドレザ・ジャイアントパンダも立派なプロレスラーだと私は思う。観客には何か圧倒的なものを目の前で見たいという気持ちが常にある。かつてのアンドレ・ザ・ジャイアントも、現在のアンドレザ・ジャイアントパンダもその点が同じ。一般の人さえ惹きつける力。

 巨大パンダ旋風を紹介する一般紙の報道ラッシュは感慨深かった。

「世間」に「プロレス」が響くのをみて、久しぶりに興奮したのである。

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