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「立ちすくむ国家」経産若手官僚の警鐘(前編)

「今までの政策は通用しない」少子高齢化の“本当の問題”とは?

『不安な個人、立ちすくむ国家』(経産省若手プロジェクト 著)

 今年の5月、経済産業省の若手官僚がウェブで公開したレポートが話題になった。『不安な個人、立ちすくむ国家』と題された65ページのレポートは、SNSで拡散され、行政資料としては異例の150万ダウンロードを記録。「官僚のイメージが変わった」という肯定的な評価や「解決策が示されていない」といった批判も含め、幅広い年代層から意見が飛び出した。11月には若手官僚のインタビュー、養老孟司氏ら識者との対談を加えた同名の単行本(小社刊)も発売されている。

 なぜこのレポートが多くの人に読まれたのか。資料を作成した「次官・若手プロジェクト」30名の中から、須賀千鶴氏(37、商務・サービスグループ)、日髙圭悟氏(37、商務・サービスグループ)、宇野雄哉氏(32、資源エネルギー庁)の3名と、彼らと同世代の論客である社会学者・古市憲寿氏(32)に議論をしてもらった。

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司会の古市憲寿氏 ©文藝春秋

古市 そもそもどういう経緯で次官・若手プロジェクト(以下若手P)は始まったのですか?

日髙 菅原郁郎事務次官(当時)の「中長期の課題について若手が自由闊達に議論をする場を作らなければいけない」という問題意識からスタートしたものです。省内でメンバーが公募され、ちょうど30名が応募。「富の創造と分配」「セーフティネット」「国際秩序・安全保障」の3チームに分かれ、識者に話を聞いたり、本を読んで勉強していました。

宇野 約1年間、毎週1回昼休みに集まったり、夜ご飯を食べながら議論を続けていきましたね。

須賀 最後はチームの垣根を越えて議論し、『不安な個人、立ちすくむ国家』にまとめました。当初は、問いと答えはセットで提示すべきという思いが強く、具体的な政策案も明記しようとしていました。でも本来やりたかった「問いかけ」のインパクトが薄れてしまうという意見が出て、あくまで日本の現状の率直な分析と、そこから出てくる「問い」の記述にとどめました。

古市 なるほど。しかし、すごいタイトルですよね。経産省の人が「国家が立ちすくんでる」と言っていいんですか?(笑)

150万ダウンロードを記録した『不安な個人、立ちすくむ国家』

須賀 その点は次官室でも5分ほど議論になりましたね(笑)。

宇野 でも、正しい現状認識がないと、正しい道を見出せない。このままで行こうという結論になった。

古市 国家が「立ちすくむ」とはどういう状態でしょう。

須賀 将来展望が暗く、財政的にも厳しいのに、反転攻勢に出られていない状態でしょうか。逆に、立ちすくんでいない国家とは、窮地に陥ったところから、テクノロジーを縦横無尽に活用することで飛躍的に発展しているエストニアのような国をイメージします。