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楠木 新
2018/01/26

ベストセラー『定年後』著者・楠木新が教える「定年後」に輝くための7カ条

「定年後は好きなことを思いきりやる」と夢見る方はご注意を。そんな曖昧なことでは早々に行き詰まってしまうかもしれない。研修セミナーに引っ張りだこの楠木氏は、準備に3年は必要と断言する。その準備として何をしたらいいか。具体例でわかる「7カ条」。

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楠木新氏 自らも定年後に取材・執筆した

 私が「定年後」について関心を持ってから15年になる。47歳の時に、当時勤めていた生命保険会社での生活に行き詰って体調を崩し長期に休職してからだ。

 その時は家にいると、どう過ごしてよいのかが分からなかった。外出はできる状態だったが、行ける場所は、書店か図書館あとはスーパー銭湯などの温浴施設くらい。テレビの前から離れず、リモコンのチャンネルをパチパチ変えることが癖になっていた。会社を離れると自分の居場所がないことを痛感した。

 休職した体験がきっかけになって、50歳から会社勤めと並行して執筆活動を始めた。60歳の定年までに『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか』(新潮新書)などの12冊の本を書き、著作のテーマは、すべて「組織で働くこと」に絞ってきた。

 そしていつかは定年後について書きたいと思っていたので、雇用延長を選択せずに60歳の定年でスパッと退職。無所属のプータローとして取材・執筆に取り組み、2年後に『定年後』(中公新書)を出版。おかげさまで多くの人の手にとってもらい、発行部数は20万部を超えた。休職したことが図らずも定年後に向けての予行演習になったというのが実感だ。

『定年後』(楠木新 著) 現在、21万部

 現在、50歳前後の社員に対する研修の講師を担当することがある。その時に感じるのは定年後の準備まで視野に入れている人は極めて少ないということだ。しかし多くの人は定年後に対して関心を持ち、漠然とした不安を抱えている。ただ毎日の仕事に追われていて、給与も毎月入ってくるのでどうしても課題を先送りしてしまいがちになっている。

 現在、60歳の人の平均余命から考えると、男性で85歳前まで、女性は90歳近くまで生きることになる。これをもとに、60歳で退職した場合の自由時間を一定の条件で計算すると、男性でほぼ8万時間、女性だともっと長くなる。残業も含めた年間の総労働時間は厚生労働省の調査で1700時間強なので、20歳から60歳まで40年間勤めた総労働時間よりも長い自由時間を持つことになる。

 若い時は上司の指示を忠実にこなし、中高年になって組織の一線で活躍して、役職定年になって落ち着いて仕事をしてきたすべての労働時間よりも長い自由時間を獲得できるのである。

 本稿では、数多くの定年退職者や、中高年以降に会社員から異なる仕事に転身した人たちの取材から、定年後をイキイキと過ごすための行動のヒントを7カ条にまとめてみた。