文春オンライン

オリンピックに「大規模派遣団」を送る北朝鮮の意図とは

韓国には早速五輪参加と引き替えの“請求書”が届けられた

2018/01/20
note

金正恩の妹・金与正の役割とは

 そして、最大のキーマンはなんといっても金与正・朝鮮労働党宣伝煽動部副部長だ。

 金副部長が訪韓すればトランプ米大統領の娘、イバンカ氏とのツーショットもあるかもしれないという浮かれた声も聞かれたが、「訪韓の可能性は極めて低い」と別の北朝鮮専門家はばっさり切る。

「金与正副部長は、北朝鮮にとって切り札となる存在です。そう簡単には出さない。

ADVERTISEMENT

 南北の軍事会談もまもなく始まるといわれますが、これが順調に進むかどうかも分からない。また、平昌オリンピック・パラリンピックが終わった後の4月には韓米軍事合同演習が始まるでしょうし、そうした不透明な先行きを見据えても大事なカードを出すはずがない。

 そもそも、金与正副部長は、金正恩党委員長の偶像化に注力し、内部権力の監視をする内政的な役割を担っている。国際舞台にはおそらく姿を現さないでしょうし、まして、スポーツの大会に出てくるはずがない。

 北朝鮮で体育分野のトップは体育指導委員長といわれていますから、訪韓でもっとも有力視されるのは、チェ・フィ国家体育指導委員長でしょう」

平昌オリンピックは無事に行われるのか ©iStock.com

イニシアチブをとろうとしている北朝鮮

 こうした動きの裏で、北朝鮮は、実務会談を終えた2日後の11日には、米韓合同軍事演習の中断などを韓国に要求した。

 前出の北朝鮮専門家の話。

「平昌冬季オリンピック参加と引き替えに、北朝鮮が“請求書”を早々に出し始めました。

 離散家族再会行事についても、引き替えに中国にあった北朝鮮の食堂から亡命してきた従業員の引き渡しを要求しています。

 15日の実務協議は、もともと韓国側が次官クラスの実務会談を行おうと提案したのに対し、北朝鮮が芸術団についての協議を先にしようと言い出して韓国が受け入れたもの。北朝鮮がイニシアチブをとろうとしている思惑が透けて見えます。

 北朝鮮が平昌オリンピックに参加すること自体は喜ばしいですが、北朝鮮に利用されるだけにならないよう、韓国は細心の警戒が必要です。

 オリンピック、パラリンピックを無事切り抜けても、4月には故・金日成主席の誕生日などもあり、北朝鮮がまたミサイルや核実験を行う可能性は高い。韓国としてはこのままなんとか対話へ持ち込みたいところですが……」

 祭りは踊らにゃ損だが、浮かれたままでは足を掬われかねない。

オリンピックに「大規模派遣団」を送る北朝鮮の意図とは

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー