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洋服屋が手がける飲食店はなぜうまくいくのか――ベイクルーズの戦略

2018/01/26

 

 キャットストリートと呼ばれる表参道の小道の一角に、日本人はもちろん、海外からの旅行客までもが行列をつくる、たった5坪の小さなお店がある。名前はLUKE’S。扱っているのはロブスターをパンに挟んだロブスターロールで、これが今、爆発的に売れているのだ。

 実はこの人気店を仕掛けているのは、ジャーナル スタンダードやエディフィス、イエナなどアパレルのセレクトショップやオリジナルブランドを幅広く展開するベイクルーズ。同社が近年力を入れているのが飲食事業だ。J.S.BURGERS CAFEやFLIPPER’Sのようなオリジナルの店舗と、LUKE’S、FRANZE & EVANSのような海外の人気店の日本での展開を手がけ、2017年12月時点で25の飲食ブランドをラインナップ。総店舗数は80に迫る勢いとなっている。

 ベイクルーズの飲食事業の売上高は2017年8月の決算時点で78億円。2年前と比べて倍増し、いまや会社全体の6~7%を占めるほどに。この秋にはカニやロブスターなどのシーフードを手づかみで食べるオリジナルの店、Catch the Cajun Seafoodをオープン。新たなムーブメントを巻き起こそうとしているのだ。勢力的かつ多彩な展開を見せるベイクルーズの飲食部門だが、実はその責任者は、飲食事業の経験がないアパレル出身であることをご存知だろうか? 牽引するのは副社長の野田晋作さん。今のポジションについたのはおよそ3年前。それまでは同社で15年ほどファッションのPRや販促部門を担当していた。

ベイクルーズ副社長の野田晋作さん(41歳)。同社の飲食部門、フィットネス部門の責任者である。

洋服ブランドの世界観を、よりリアルに表現するには? 

「もともと弊社が飲食事業を始めたのは、新宿にジャーナル スタンダードがオープンした2000年のことでした。その時にファッションだけでなく、ライフスタイル全体を通してブランドの世界観を提示できないかと思い、1F、2Fで洋服を扱うだけではなく、3Fでハンバーガー屋も始めたんです。ジャーナル スタンダードはアメリカのカルチャーがベースにあるんですが、当時、現地にあるようなカッコいいダイナーが日本にはなかったので、じゃあ、自分たちで作ろうということになってスタートしました。エアストリームと呼ばれるシルバーに輝くキャンピングトレーラーを店内に入れて、その中で調理をしてハンバーガーを提供するスタイルです」

 ブランドの世界観を立体的に表現する手段のひとつとして、飲食店を開始。野田さんはファッションPRの立場でハンバーガー店の運営に関わっていたのだが、当時は会社として飲食をここまで本業としてやっていくようになるとは思わなかったとか。野田さん自身、入社当時は洋服に関する仕事しかやりたくなかったそうだが、今、実感するのは、ファッションも飲食も、売るものが違うだけで、やっていることは結局一緒だってことだ。

「お客様がほしいものを想像して、それを見つけてきたり、つくったりする。それを、メディアを通してどうお客様に伝えていくか。洋服の場合は、着るとカッコよくなれることをお客様に想像させなくちゃいけないし、飲食の場合は、おいしそう、楽しそう、おもしろそうと期待させなきゃいけない。お客様を満たすべき欲求の種類が違うだけで、それをどう実現してあげるのかを裏側から考えることは一緒なんです」