文春オンライン

「杉原千畝が読めなかった疑惑」の安倍首相は難民を受け入れるのか?

今週の珍言・暴言・問題発言

2018/01/20
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安倍晋三 首相
「世界中で杉原さんの勇気ある人道的行動は高く評価されている。同じ日本人として本当に誇りに思う」

時事ドットコムニュース 1月14日

 今週の珍言、暴言、問題発言を振り返る。欧州歴訪中の安倍首相は14日午前、リトアニアのカウナスを訪れ、第二次大戦中にユダヤ人難民を救った外交官、杉原千畝氏の記念館を視察した。安倍首相は視察後、記者団に「同じ日本人として誇りに思う」と強調。スクバルネリス首相との会談でも、杉原氏の行動は人道的に重要な意義があるとの認識で一致した(産経ニュース 1月14日)。

リトアニアの杉原千畝の記念館を訪れ「命のビザ」のパネルなどの展示を見る安倍首相と昭恵夫人 ©共同

 安倍首相の公式ツイッターの動画について、安倍首相が「杉原千畝」の「千畝」を読めなかったのではないか? という疑問の声が上がっているが、そんなことは瑣末なことに過ぎない(編集部注・公式ツイッター動画の0:20頃)。記者団にもずっと「杉原さん」と言っているから、たぶん本当に読めなかったんだろう。でも、そんなことはいいじゃないか。杉原千畝氏は、ナチスから逃れてきたユダヤ人たちにビザを発給しようとしたが、日本の外務省から「ビザを出してはいけない」と言われていたにもかかわらず独断でビザを発給し、帰国後は外務省から解職された(杉原千畝記念館サイトより)。

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 杉原氏のように、権力や政府に逆らってでも弱者の立場に立つことが大切であり、それが日本の誇りだということを安倍首相が訴えているのであればそれで十分じゃないか。日本政府は今後、難民を快く受け入れていくのだろうか?

佐藤正久 外務省・副大臣
「日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しいと言っても過言ではない。条約は現実の安全保障の観点を踏まえていないため、署名することはできない」

BuzzFeed NEWS 1月16日

 2017年のノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の事務局長で、初来日中のベアトリス・フィン氏が、衆院第1議員会館で国会議員との討論集会に参加した。

 フィン氏は「核の抑止力は神話にすぎない。日本は核兵器廃絶に向けたリーダーになれる」と核兵器禁止条約への署名を呼びかけたが、外務省を代表して出席した佐藤氏は真っ正面から否定。「日本政府としては、わが国のアプローチとは異なる核兵器禁止条約に署名することはできませんが、現実の安全保障の脅威に適切対処しながら、地道に現実的に廃絶を推進する取り組みを目指すつもりであります」と述べた。どちらかが一方的に意見を押し付けるだけではなく、こうやって意見を交わす機会があるのは大事なことだと思う。

国会議員との討論集会を前に握手するICANのフィン事務局長と佐藤正久外務副大臣 ©時事

 また、フィン氏は安倍首相との面会を求めていたが、政府は日程を理由に断っている。このことについて、ネットでは「相手がいないことが確定している日程を指定してアポを取り、断られたら相手を否定するのはおかしい」とICAN側を非難する声が相次いだが、フィン氏が18日まで日本に滞在していた一方、安倍首相は17日に帰国して新年茶会「初釜」に出席している(時事ドットコムニュース 1月17日)。ICANを非難するにはあたらないが、安倍首相はどうしても「初釜」に出なければいけなかったのだろう。ICANはまた日程調整して来ればいいじゃないの。