文春オンライン
日刊ゲンダイ“衝撃の珍論”で考える、安倍首相「平昌五輪出席問題」

日刊ゲンダイ“衝撃の珍論”で考える、安倍首相「平昌五輪出席問題」

一般紙の論調を凌駕するウルトラC

2018/01/26
note

なぜか船越英一郎を持ち出す「日刊ゲンダイ」

 こういう提案もあった。「日刊ゲンダイ」だ。

「安倍政権 船越英一郎の対応見習え」(1月13日付)

 ふ、船越英一郎?

ADVERTISEMENT

 いったいどういう主張なのか。読んでみた。

 まず、安倍首相の開会式出席の慎重論に対し「ちょっと感情的になりすぎではないか。」と書く。ゲンダイらしからぬ淡々とした呼びかけである。

 しかし、

《ぞんざいな合意をタナに上げ、怒りに任せて韓国政府に激しい言葉をぶつけるとは、この政権はつくづく大人げない。》

「見習え」ときた

 ゲンダイ師匠、徐々にボルテージをあげてきた。ぞんざいな合意というのは、慰安婦問題に関する日韓合意のこと。

《そんなに韓国政府に合意の長期的な順守を求めるなら、なぜ安倍政権は条約の形式を取って国会で審議し、日韓両国の立法府も巻き込んだ合意を形成しなかったのか。日韓合意は2015年12月28日、年末のドサクサに日韓両外相が共同会見を開いて発表しただけ。合意内容について公式な文書すら交わしていなかったのだ。》

 開会式を欠席するのは、

《韓国国内の一部反日勢力の慰安婦問題をめぐる感情論と同じ土俵に立つつもりなら、愚かだ。》とゲンダイは説く。

わかりやすい! でも各方面から叱られそうな例え!

 そしていよいよ「船越英一郎」の登場である。

《例えは悪いかもしれないが、国と国との「合意」を一方が反故にするのは離婚交渉に似ている。昨年、松居一代のエキセントリックな言動にダンマリを貫いた船越英一郎を見習って、安倍首相も静観すべきではないか。》

 ゲンダイ師匠は韓国の「エキセントリックな言動」を松居一代に例え、日本は船越英一郎の「静観」という態度を見習え、と主張するのである。

 わかりやすい! でも各方面から叱られそうな例え!

船越英一郎 ©深野未季/文藝春秋

 最後は、

《安倍自身が唱える北包囲網には韓国の協力が不可欠。日韓両国にすきま風が吹けば、金正恩を喜ばせるだけである。 》

 と締める。

 ゲンダイは「冷静に対応して開会式も出席したほうがいい」という「毎日」に近い論調なのであろう。

 ふだんから安倍首相の「度量」に関してチェックしているゲンダイ師匠としては「器の大きさを見せろ!」ということか。

船越英一郎が松居一代に直接何かを言いに行っていたら

 そして今週24日、「産経」紙上での出席表明。

《五輪開会式出席をめぐっては、首相官邸や外務省の幹部にも慎重意見が根強かった。また、首相の支持者の間でも反対論が圧倒的だったにもかかわらず、首相があえて出席を決断したのはなぜか。》

「首相周辺は語る」として次の言葉が載る。

《韓国の文在寅大統領は日韓合意をおとしめ、日本に新たな措置を求めることを表明して、それで話を終わらせようとしていた。そうはいかない。安倍首相は文氏に、合意を履行して在韓日本大使館前などの慰安婦像を撤去しろと言う。》

 こうして読むと「出席」という対応はするが《船越英一郎の「静観」という態度》を見習うというより、むしろ「ガツンと言いに行く」というニュアンスに近い。五輪という機会に政治の話をしに行くのだ。

 実際、「夕刊フジ」は「安倍殴り込み 平昌出席」「慰安婦像撤去しろ!!」(1月25日付)との1面見出し……。

夕刊フジは「殴り込み」、産経は「拒否伝える」

 あのとき船越英一郎が松居一代に直接何かを言いに行っていたらどういう展開になっていただろう。

 いけない、ついついゲンダイ師匠の例えで考えてしまっている。

日刊ゲンダイ“衝撃の珍論”で考える、安倍首相「平昌五輪出席問題」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー