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連載松尾諭「拾われた男」

松尾諭「拾われた男」 #11 「大ベテランの“間違っちゃった”で幸運をもらった日」

2018/01/28

genre : エンタメ, 芸能

 中学1年の時、好きだった新橋さんがいたので、陸上部に入った。走るのはしんどいので、楽に見えた砲丸投げを選んだが、部長がスパルタで思った以上に練習がきつく、新橋さんにもフラれたので、恐る恐る退部を申し出ると、部長は意外にもあっさり認めてくれたが、笑顔をたたえたままの彼に、短距離用スパイクで蹴られて、太ももにいくつか穴が開いた。

 中学2年になって仲良くなった友人の勧めもありバスケ部に入部した。女子バスケ部には可愛い子がたくさんいたので、かっこいいところを見せたかったが、練習はやはりキツいし、試合にも出してもらえないので半年で辞めた。

松尾諭さん、NHK連続テレビ小説「わろてんか」に川上四郎役で出演!(相方は広瀬アリスさん演じる秦野リリコ 写真提供:NHK)

高校ラグビー部で課された「一発芸」

 高校に入ると、ぽっちゃり体型だったこともあり、ラグビー部から熱烈な勧誘を受けた。汗臭そうな印象のあるラグビー部の人たちは思ったよりも爽やかで、少しいい男だった。だからなのか、スクールウォーズの影響なのか、それともラグビーをやっていた兄に対するライバル心があったのかは今となってははっきりしないが、ラグビー部に入部する事にした。ラグビー部の練習は楽しく、先輩たちも優しかったが、入部届けを提出した日から、彼らは鬼と化した。練習は地獄となり、少しでも先輩の機嫌を損ねると、連帯責任で1年全員に、スクワットをさらにハードにしたものを数百回や、両手を壁につき、両足を肩幅に開き踏ん張り、尻を出す体勢で、背中に人を乗せて数百秒数える「姿勢」などの過酷なノルマが課せられた。

 中でも最も過酷だったものが、他の運動部が見ている前で、校舎と運動場をつなぐ歩道橋の上に1人ずつ上り、大声で200メートル先の先輩達を笑わせる「一発芸」なるもので、笑いを取れれば合格で、1年生全員が合格するまで終わらない。笑いを取れなかった者は、何度もネタをやらされる。最後まで残った者は合格するまで、泣きながら面白くもないネタを何度もやらされる事となり、夕暮れの中、涙ながらに一発芸をするその光景はまるで地獄絵図だった。ちなみに全員が笑いを取れなかった場合はさらにスクワットか姿勢の罰が追加され、そして全員が合格した事は一度もなかった。入部してからは毎日筋肉痛で満足に歩けない日々が続いたが、中学から知る友人たちが「あいつはすぐに退部する」と言うのが悔しかったので、厳しい練習に耐えた。そのうちに身体はどんどん筋肉質になり、夏になるころには練習が楽しくなっていた。