文春オンライン

「クラブシーンの仕掛け人」が切り盛りする“朝食専門店”の謎

各駅停車パンの旅 渋谷編

2018/01/27
note

開店したのは老後に備えて!?

 NYから帰国後、20年にわたってつづけた夜の仕事をやめ、料理に転向。

「ケータリングをはじめてみたら、ぴったりはまったんです。ホームパーティしたいお金持ちの奥様に、『こんなの、私、作ってみたい』という写真をもってきてもらって、あたかもご自身がもてなしたかのように、料理だけではなくセッティングまでいっしょにやってさしあげる」

 そして、BREAKFAST CLUBを開店したのは、早くも老後に備えてだという。

ADVERTISEMENT

豚の生姜焼き

「おばあちゃんが一日中レジに座ってタバコ屋のお会計するでしょ、ああいうイメージで、アメリカにあるダイナー、コーヒーショップと日本の定食屋を足した感じ。朝ごはんとサンドイッチ、丼ものがいつでも食べられる」

 キューバンサンドイッチを頼むと、カウンター越しに見える調理の場面がちょっとした見ものだ。具材をはさんだパンを鉄板に置いたら、アイロンのような形のプレス器に女の子が体重をかけてぎゅうぎゅう押す。

キューバンサンドイッチを、プレス器で押す

 チーズとトマトのグリルトーストは、加熱されジューシーさと甘みを増したトマトがチーズとともに流れでる。単純なだけにはまる味だ。このホットサンドも鉄板が肝になっている。

「キューバンサンドみたいにぎゅーっとは押さないんです。コツは余計なものは入れず、バターを惜しまないこと。鉄板にバターがつくのも惜しまず、外側にたっぷり塗って。あれはケチるとダメです」

チーズとトマトのグリルトースト

 その由来はNYの記憶にさかのぼる。

「ミュージシャンで貧乏してた時代によく食べました。安く食べられる。お腹がいっぱいになるんですよ。ダイナーの定番。ああいうところから買う」と言って、自分の店のテイクアウト窓口を指差した。

それにしても、疑問は残る。前衛ロックからサンドイッチまで、なぜるりさんはこんなにやすやすとやりこなせるのか。

「音楽も料理も似ているところがあります。両方ともフィーリングですから」

BREAKFAST CLUB

東京都目黒区東山2-2-4

03-6886-8872

月~金10:00~17:00 (L.O 16:00)
土日祝10:00~18:00(L.O 17:00)
BAR 水木金 20:00-2:00

月曜定休

写真= 池田 浩明

「クラブシーンの仕掛け人」が切り盛りする“朝食専門店”の謎

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー