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山崎 誠子
2016/08/13

生物学、社会学的に徹底検証 人はなぜ「不倫」するのか? ベッキー、宮崎からファンキー加藤、円楽まで【全文公開】

source : 週刊文春 2016年6月30日号

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル

このページに並ぶ面々の心境で一句詠めば、「かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ 不倫魂」といったところか。バレたら大事になると分かっていながらも、ついやってしまうのはなぜなのか。“経験者”たちに聞きつつ、生物学的な見地から検証した。

議員辞職した宮崎氏

 タレントのベッキー(32)と「ゲスの極み乙女。」川谷絵音(27)から始まり、“育休議員”宮崎謙介氏(35)、桂文枝(72)、米米CLUBの石井竜也(56)、乙武洋匡氏(40)に、最近ではファンキー加藤(37)や三遊亭円楽(66)まで、今年に入ってから世間を大きく騒がせ続けている著名人たちの不倫問題。バレたら仕事がなくなったり、離婚の危機に陥るなど、様々なリスクを抱えながら、なぜ人は不倫をするのだろうか。学者と“不倫経験者”に徹底取材し、その謎に迫りたい。

 

「不倫という言葉があるのは人間だけ。生物学的には『浮気』が正しいのです」

 こう語るのは動物行動学研究家の竹内久美子氏だ。

「人類の歴史において、いかに病原体と戦って、子孫を残していくかというのは、大きな課題です。そのためには、感染症による子孫の全滅を防ぐために遺伝子の多様性を保つ必要があるのです。

 つまり、浮気は生物の生き残り戦略として必要なこと。生物にとって浮気は本能なのです。本来、“倫理に反している”ということで断罪されるような話ではありません」

 生物学者の池田清彦氏もこう指摘する。

「一夫多妻は生物として多様な遺伝子を残そうとする本能です。生物の中で一夫一婦制を取っているのは、シジュウカラやアホウドリなど非常に少ない。人間にも、多様な遺伝子を残そうとする本能が残っているから男性は浮気をするのです。

 一方、発情期のメスにしかオスが反応しないことを、メスはよく知っています。だからメスはオスの気をひくために、いつ発情しているかわからない状態を作っています。人間のメスは動物と違い、年がら年中化粧をしたりして発情期に見せかけているのですから、男性の本能として、それに反応してしまうのは当たり前ともいえるでしょう」

 本能だから仕方がないということなのか……。

桂文枝
Photo:Kyodo

 たしかに、著名人だけではなく、不倫は誰にとっても身近なものだと言える。2009年に雑誌『プレジデント』と『gooリサーチ』が行った40~60代の既婚者男女3208人への調査によると、夫の34.6%、妻の6%に婚外交渉の経験があった。夫の経験者のうち、28.7%が2回以上の経験を持っており、常習化の傾向もあることがわかっている。

 一方で、不倫は法律上、不貞行為とされ、処罰の対象となっている。不倫をされた側は「夫婦で平和な共同生活を送る権利」を侵害されたことになり、民法第709条に基づき、不倫をした側とその相手に対して損害賠償を請求できる。

 本能であるはずの行為が、なぜ咎められるようになったのか。

 著書に『はじめての不倫学』(光文社新書)がある社会起業家の坂爪真吾氏は歴史的背景をこう解説する。

「『魏志倭人伝』には『身分の高い男性は4~5人の妻を持ち、庶民も2~3人の妻を持っている。そして妻は嫉妬をしない』と書かれています。平安時代においても在原業平や源氏物語の光源氏の例を見ればわかるように婚外恋愛やセックスが社会的に非難されることはありませんでした。

 日本において浮気が倫理に反する行為というように認識されはじめたのは、“家の血筋”を重んじる武家社会になってからです。浮気は『密通』と呼ばれ、浮気された側がした側に私的な刑罰を加える権利がありました。ただ、江戸時代後期には、幕府の権威低下や不景気、それに伴う風紀の乱れから密通に対する刑罰も多少ゆるやかになり、明治に入ってからも民法で明治31年まで妾を持つ一夫多妻制が認められていました。

 その後、富国強兵のかけ声の下、人口を増やすことが必要となり、結婚から“あぶれる男”を少なくするため、一夫一婦制が導入されたのです」

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