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鳥集 徹
2018/02/05

Q7 手術で治る人と治らない人がいるのはどうして?――がんにまつわる素朴な疑問 Q&A

 生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。参考文献として信頼できるサイトのリンクも紹介しています。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。

A7 がんの悪性度が異なるからです。

 この問いに答えるためには、まず「がんで手術ができるのはどんな場合か」を知っておく必要があるでしょう。

「根治(完全に治すこと)」を目的に手術ができるのは原則的に、がんが特定の場所に限局している(限られた部分にとどまっている)場合です。がんが広い範囲に及んでいたり、遠いところに転移(飛び火)したりしている場合は手術の対象となりません。

 なぜなら、完全に治すためには、がんを取り残してはいけないからです。もしがんがどこかに残ってしまったら、遅かれ早かれ大きくなって再発します。手術をしてもすぐに再発したら、「体をメスで傷つけて命を縮めただけだった」ということになりかねません。ですから、がんが限局している早期のうちに手術をするのが鉄則なのです。

 かつては、徹底的にがんを取り除けば治せると信じられ、かなり進んだがんでも広範囲に切除する「拡大手術」が盛んに行われました。しかし、むやみに拡大手術をしても結局再発し、患者の体に大きなダメージを与えることがわかり、治せるチャンスがある場合を除いて拡大手術はあまりされなくなりました。このようにがんは、なんでもかんでも手術すればいいというものではないのです。

 一方、腫瘍が限局している早期がんに対しては、積極的に内視鏡治療(胃カメラや大腸カメラを使った切除術)や手術が行われています。全国がんセンター協議会が公表しているデータを見ると、胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどは、早期がん(Ⅰ期)であれば9割以上の人が完治の目安となる5年生存を期待できることがわかります(乳がんは術後10年が完治の目安)。

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 しかし、Ⅰ期のがんでも、術後に再発してしまう人はいます。とくに肝胆膵がんや肺がんの一部(小細胞肺がんや扁平上皮肺がん)は、Ⅰ期でも他に比べ5年相対生存率が高くありません。なぜ、このような違いが出てしまうのでしょうか。

 それは、同じがんと言っても、細胞のタイプやできた部位によって悪性度が異なるからです。悪性度の低いがんほど飛び散りにくいので、手術をすれば高い確率で治すことができます。そもそも、悪性度の低いがんは進行が遅いので、限局している早期のうちに見つかりやすい面もあります。

 反対に、悪性度の高いがん細胞は飛び散りやすいため、限局しているうちに手術で取りきれたと思っても、どこかに見えないがんが残っていて、いずれ再発してしまうことが多いのです。また、悪性度の高いがんは進行が速いために、早く見つけることも困難です。がんの種類によって治りやすさが違うのは、こうした理由によるのです。

【参考】全国がんセンター協議会「全がん協 部位別臨床病期別 5年相対生存率(2006~2008年 手術症例)」