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古森 義久
2018/02/05

TPP復帰を示唆 なぜトランプ氏は方針転換したのか

ダボス会議では「米国第一」を強調 ©共同通信社

 いやはや、やはり“トランプ旋風”ということか。

「大きなニュースがある」

 1月25日、米国のトランプ大統領は、米CNBCのインタビューで、そう切り出すと、こう明かしたのだ。

「これまで以上の内容が得られるなら、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟諸国との再交渉を考える」

 このインタビューは、翌日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)への出席を前に行われたものだが、トランプ氏はダボス会議における演説でも改めて、TPPへ復帰する可能性を示唆した。

 太平洋を囲む合計12カ国からなるこの自由貿易協定案を、トランプ氏は大統領選中から「米国にとって不利な取り決めだ」と拒み、就任直後に離脱の手続きをとったのは周知の通り。それだけに、この突然の発言に日本の政財界は仰天したが、なぜトランプ氏は“方針転換”したのか。

 ひとつには、以前からTPP離脱によりアジア市場を失うことを恐れた米財界の一部から、TPP復帰を求める声が上がっており、今秋の中間選挙を見据えて、こうした声に応じたという見方がある。

 一方で、筆者が見るところ、転換の最たる理由は、中国への警戒感にありそうだ。

 トランプ政権のデービッド・マルパス財務次官(国際問題担当)は「この1年間の中国の略奪的な経済活動の拡大とアメリカ経済の好転」を理由としてあげている。

 中国については、トランプ大統領自身もダボス演説でTPPに触れる直前に「不公正な貿易の慣行」「知的財産の大規模な盗用」などと非難していた。TPPは本来、自由貿易を目指す各国が中国に対抗するため企図した構想だった。ついにトランプ政権も、中国の貿易面での規範逸脱の膨張をTPPに入ってでも抑える必要に迫られた、ということではなかろうか。

 トランプ政権がいかなる再交渉を求めてくるのか、現状では不透明だが、TPPをめぐってはアメリカ以外の11カ国が合意文書を1月23日にほぼ確定し、3月に正式署名することを決めたばかり。その文書をまた再交渉の対象にすることは手続き上、難しいが、実は、同文書には日本などの配慮でアメリカの復帰も可能にする「凍結」部分も含まれている。