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古森 義久
2016/08/27

トランプ候補が新参謀に迎えた“危険人物”とは?

source : 週刊文春 2016年9月1日号

genre : ニュース, 国際

バノン氏(本人ツイッターより)

 いやはや、ドナルド・トランプ氏というのはとにかく周囲を驚かせる人である。

 トランプ陣営は8月17日、選対本部の最高責任者に有力ニュース・ネットサービスの「ブライトバート・ニュース」会長のスティーブン・バノン氏(62)を任命したと発表した。トランプ氏が共和党指名候補となって1カ月。選挙戦が本格化する中での突然の選挙対策本部長交代の背景には、今年3月に就任した前任のポール・マナフォート氏が、ウクライナがらみの不正資金疑惑を追及されたことも指摘されている。

 問題は後任のバノン氏もまた、“いわくつき”の人物であるという点だ。バノン氏は一般の知名度こそ低いが、政治の世界では知る人ぞ知る、保守陣営の陰の大物活動家である。「ブライトバート」の経営に成功しただけでなくメディア事業への多岐にわたる投資でも巨利を得てきた。

 もともとは海軍士官としてキャリアをスタートさせて、駆逐艦乗務や国防総省に勤務。退役後はハーバード大学で経営学修士号を得て、米投資銀行「ゴールドマン・サックス」にも勤務した。

 政治活動を始めたのは90年代。メディアを積極的に活用し、「保守政治活動会議」という全米的な草の根組織を結成し、影響力を強めた。以来、独特の手法で国政を背後から揺さぶり続けてきた。

 巨大な体躯で自らもテレビやラジオに出演して、機関銃のような早口で語ることで知られる。昨年はクリントン財団の資金疑惑に光を当てた『クリントン・キャッシュ』という単行本と映画を世に出して、話題となった。

 その政治主張は超保守で、オバマ政権やヒラリー・クリントン民主党大統領候補の政策を徹底して叩く。アメリカの国益最優先を唱え、自由貿易の放任や移民政策の弛緩に反対する。このへんはトランプ氏の主張と共通するわけだ。

 バノン氏が得意とするのは攻撃的なキャンペーンだ。トランプ陣営は今後、クリントン候補の弱点に的を絞った激烈なネガティブ・キャンペーンを展開することが予想される。米メディアの一部では「米国で最も危険な政治仕掛人」とも称されるバノン氏の起用は、トランプ陣営にとって果して吉と出るのか、凶と出るのか。

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