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ケガからの再起を図る西勇輝、オリックス「悪夢の22年」を終わらせろ!

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/02/05

 最も優勝から遠ざかっているプロ野球チーム。今のオリックスを説明するのに度々使われる不名誉なフレーズである。

 前回オリックスがリーグ優勝を果たしたのは1996年。日本シリーズを制したのも同じ年であるから、それから既に22年が経ったことになる。ちなみに1996年にレコード大賞を受賞したのは、昨年引退を発表した安室奈美恵の「Don't wanna cry」。作詞とプロデュースを担当したのは、先日不倫問題でこれまた引退を表明した、全盛期の小室哲哉である。

1996年日本シリーズの第5戦終了後、グリーンスタジアム神戸(当時)で優勝フラッグを持って歩くイチローらオリックス選手たち ©文藝春秋

タイガースの長期低迷をしり目に快進撃を続けたが……

 まもなく開催される平昌五輪にて金メダルが期待される女子スキージャンプの高梨沙羅が生まれたのが、オリックスが長嶋ジャイアンツと日本シリーズを戦ったのと同じ1996年10月。当時から現在まで依然として第一線で活躍しているのは、この年に史上初の七冠を達成した羽生善治と当の日本シリーズに出場していたイチローくらいのものである。

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 それまでのオリックス、そして前身の阪急ブレーブスは強い球団だった。同じ関西に拠点を置く人気球団阪神タイガースの長期低迷をしり目に快進撃を続ける球団の姿は、たとえどんなに球場に閑古鳥が鳴こうと、ファンの誇りと言えた。1995年の阪神淡路大震災の年の活躍が地元神戸の人々をどれだけ勇気づけたかもよく知られている。

 しかし、しかしである。その後の低迷期は実に長い。とりわけ酷かったのは、イチローが2000年末に移籍して以後の成績である。チームは何度も最下位を経験し、いつしかBクラスの常連になった。

 混乱に満ちていたのは成績だけではなかった。2004年には近鉄バファローズの吸収劇があり、その主力選手を受け入れたにも拘わらず、チームは依然として低迷を続けた。監督はころころと変わり、目指すチームの方向性も変化した。2014年の久々のAクラス入り直後には、FA選手や大物外国人選手の受け入れ等、大規模な戦力強化が行われたが、成績は逆に急降下した。

 ドラフトのくじは引いても引いても当たらず、打つ手打つ手は裏目に出た。何か巨大な陰謀が背後に存在するのではないか、と思えるくらいの惨状だった。

2004年、合併前の最終戦を終えて握手するオリックスと近鉄のナイン ©共同通信社

ようやく終わった「ドラフト抽選11連敗」記録

 とはいえ、野球シーズンの開始を前にした今、悪いニュースばかりがあるのではない。最大の良いニュースは、ドラフトの成功である。悪夢の「ドラフト抽選11連敗」記録を破って社会人ナンバーワンの評価も高い田嶋を指名できたのは、単にこのチームの運がようやく上向きつつあることを示唆するだけではない。

 オリックスにとって、安定した先発左腕の獲得は、この何年かのチーム編成上の最大の課題であり、これまでも貴重なドラフト1位の枠を使って松葉、山崎福を獲得してきた。しかし、彼らは伸び悩み、高卒ルーキーとして獲得し、幾度も先発の機会を与えられて来た山田も目立った成果を上げることができなかった。田嶋の加入が、同じく左腕先発候補のWBCカナダ代表アルバースの加入ともあいまって、彼ら従前の左腕先発投手候補者たちの刺激となり、戦力を一挙に底上げすることになるなら歓迎しないファンはいない。

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