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医学的効果のある入浴法は「40度、全身浴、10分」の黄金法則

毎日の入浴で、新陳代謝、免疫力、体力を上げる

2018/02/25

 日本人はお風呂が大好きな民族です。温かいお湯に毎日のように浸かる習慣をもつ国は、世界中どこを探しても日本だけです。温泉や銭湯は日本の伝統文化として、古くから我々の暮らしに根づいてきました。

お風呂の医学的効果は意外と知られていない ©iStock.com

 しかしながら、お風呂の医学的効果や、正しい入り方については、意外とまだ広く知られていません。

 私は地域医療に携わった経験から、およそ20年にわたり、生活習慣としての入浴を医学的に研究してきました。そのなかで分かったのは、毎日のお風呂において正しい入浴法を実践すれば、“健康長寿”を目指せるということです。

毎日の入浴習慣がある人は要介護になりにくい

 入浴と健康長寿の関係を示す例として、日本温泉気候物理医学会が実施した「入浴習慣と要介護認定者数に関する5年間の前向きコホート研究」(2011年)を紹介しましょう。

早坂信哉氏

 この調査では、65歳以上の高齢者600名ほどを対象に、5年間の追跡調査をおこなっています。高齢者を、入浴の頻度別にグループ分けし、5年後の要介護認定者数を調べました。その結果、週7回以上お風呂に浸かる習慣があるグループは、そうでないグループに比べて、自立度が1.85倍も高いという数値が出ました。つまり、毎日の入浴習慣がある人は、要介護になりにくいのです。

 また、2012年に私がおこなった研究では、入浴習慣と幸福度の関係が分かっています。静岡県在住で20歳以上の男女3000人へのアンケート結果をもとに、彼らの入浴習慣と主観的幸福度の相関性について調べました。主観的幸福度とは、自分が日々の生活でどれくらい幸せだと感じているかを、0から10までの11段階評価で回答してもらうものです。すると、毎日の入浴習慣がある人のほうが、そうでない人に比べて、主観的幸福度が高いという結果が出ました。

 このように、毎日の入浴習慣は心身共によい影響を与えるのです。

 ここで注意すべきことは、入浴は、シャワーを浴びるだけの「シャワー浴」ではなく、湯船にしっかりと浸かる「浴槽浴」である必要があるということです。浴槽浴にはシャワーだけでは得られないメリットが多くあるのです。

体のライフラインを強化する

 それでは、その医学的効果は具体的にどのようなものなのか。浴槽浴が心身に与える効果は大きく分けて3つあり、「温熱作用」、「静水圧作用」、そして「浮力」です。

 このなかで最も重要なのは、「温熱作用」です。温かいお湯に浸かることによって、まずは体の表面が温められます。次に皮膚の下まで熱が伝わり、血管の拡張が起こることで、血液の流れがよくなります。人間の細胞は、体の隅々まで張り巡らされた血管を流れる血液によって、酸素や栄養分を受け取り、二酸化炭素などの老廃物を回収してもらいます。血液の巡りがよくなるということは、いわば、体にとって一番大事なライフラインが強化されるということ。新陳代謝の活発化、免疫力、体力の向上が期待できるのです。

 また、体が温まることで筋肉や関節の緊張が和らぎ、肩こりや腰痛、筋肉痛が緩和されるという効果もあります。

「温熱作用」に加え、「静水圧作用」も血液の循環に働きかけます。お湯のなかに浸かると、人間の体には水圧がかかります。この水圧は意外と侮れないもので、肩までお湯に浸かった状態で腹囲を測ってみると、空気中に比べて数センチ縮んでいることもあるほどです。この水圧が皮膚の血管にかかってくることで、血液が心臓に押し戻されることになります。また、お湯に浸かっている間に水圧で押さえつけられていた血管は、湯船から出た瞬間に開放され、血液が一気に流れ出す。この一連の働きが、血液の巡りをよくすることにつながります。

 最後の「浮力」は、主に精神面に効果をもたらします。お湯に肩まで浸かった場合、その人の体重は浮力によって10分の1になるという計算です。体が軽くなることにより、大きなリラックス効果があるのです。

 以上を踏まえたうえで、健康長寿のための「正しい入浴法」とは具体的にどのようなものなのか。