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33歳で亡くなった母が5歳の娘に教えた『はなちゃんのみそ汁』のいま

著者・安武信吾さんインタビュー #1

2018/02/13
note

「ママ、なんもできとらんやん」

──仕事と家事と育児で忙しい中、いつ執筆されたのですか。

安武 毎朝4時に起きて、6時までの2時間を執筆の時間にあてました。二日酔いでも必ず4時に起きて、まずお湯を沸かす。1杯のコーヒーを飲みながら、千恵のブログを開くんですけど、最初は泣いてばかりでした。でも、ブログを読みながら原稿を書いていると、だんだん千恵と会話しているような気になってきて。今思い返しても、すごくいい時間でしたね。

『はなちゃんのみそ汁』

─―2012年3月に本が発売されて、はなさんの反応はどうでしたか。

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安武 はなは、小学5年で初めて読みました。それまで手に取らなかったんです。

本当に、命がけで産んでよかったとあらためて感じております。
今は、私が、ムスメから寿命を延ばしてもらっています。

ムスメの卒園式まで。
ムスメの卒業式まで。
ムスメの成人式まで。
ムスメの結婚式まで。
ムスメのこどもが産まれてくるまで。

できる限り延ばしたいものです。

©安武信吾

安武 この千恵の言葉を読んで、「ママ、なんもできとらんやん。ママがかわいそうすぎる。もう読めん」ってワンワン泣き出した。それからまたしばらく読みませんでした。今はもう全部読んでいると思いますけど。

──「お母さんから愛されていた」という事実は伝えられたと思いますか。

安武 伝わったからこそ、泣き出したのだと思います。

 2年前だったかな。夏休み最後の夜に、「ママはどうして私を産んだのかなあ。もし、私を産まなかったら、今も生きていたかもしれんね」って娘がぼそっと呟いたことがあったんですよ。僕はそこで、千恵が亡くなる2カ月前に綴ったブログの一文を読み聞かせました。〈ムスメに出会えたことは、私がこの世にいたという証だ。自分より大事な存在に出逢えたことは、私の人生の宝。サポーターの力は最強。私の人生の目的は、これだったのかな〉。はなは涙ぐみながらも安心して眠ってくれて、ああ僕もはなも、妻に救われて生きているんだな、と感じました。