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鈴木 大介
2018/02/12

女性“おひとりさま”の老後は厳しい――「シニア婚」は解決策になるか

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一押しニュース

▼〈シニア婚、経済的メリット大?長い老後、本当に「結婚はコスパ悪い」と言い切れますか?〉 1月16日、ビジネスジャーナル(筆者=黒田尚子)

 経済報道サイトのビジネスジャーナルで「『足るを知る』のマネー学」を連載するファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏。乳がんからのサバイバーでもあり「がんとお金」という視点からも情報発信をしている氏の記事が目を引いた。昨今熟年離婚が増えていることの半面で、「シニア婚」もまた増加しているという。若者が結婚は「コスパが悪い」と後ろ向きな世相のなかで、シニア婚は経済的にお得なのかどうなのかを黒田氏は検証する。

 ディテールは記事に譲るとして、黒田氏の出す結論は、シニア婚は多くのケースで収入を増やし、支出を削減できるというもの。ひとり頭の支出は単身世帯の6割に圧縮できるし、控除や手当を含めて収入面でもメリットが勝ると言う。

 だがここで注視すべきは黒田氏がその検証の中で「公的年金だけでは女性の“おひとりさま”の老後は厳しいといわざるを得ない」「シニア婚が経済的問題の解決策の一つとなりうる」と奇麗ごと抜きの指摘をしていることだ。

©iStock.com

 実際、日本の高齢女性は貧しい。メディアの報道などもあって女性の貧困も随分と可視化されてきた印象があるが、それこそ高度成長期もバブルの時代も現在も、高齢女性は貧困当事者の上位を占め続けてきた。子どもや就労年齢の女性の貧困問題と比較して、報道や議論のテーブルに登って来ないのは、おばあちゃんの貧困問題には「奨学金問題と風俗勤めの女子大生」「給食で必須栄養素をギリギリ確保する現代の母子世帯」のようなパンチがないからに過ぎない。

 そんな中、昨今の熟年離婚の増加のニュースを目にする度に、僕は複雑な気持ちを抱えてきた。熟年離婚の増加は、女性の人生の自己決定権に無理解、というより理不尽ですらあった世代の男性に対しての、女性からの反逆という文脈で読み解くこともできる。捨てられる男尊女卑な夫の自業自得をなかば「ザマァみさらせ」ぐらいに感じる一方で、やはり就労面をはじめあらゆる点で日本が女性に厳しいのは変わらない。彼女らが踏み出した離別の一歩を賛辞したい気持ちと同時に、やはり心配なのがその後の貧困リスクなのだ。

 だがどうだろう。高齢女性には貧困リスクが色濃いが、一方で高齢男性は孤立リスクが高い。

 これほど進行した核家族社会の中、離別後の男性が子どもに老後のケアを期待できるのは恵まれたケースに過ぎない。家庭を顧みずとも日本を支えてきた労働は崇高だが、高齢男性の多くは家庭生活の運営においては無能に近い。

 独りがリスクなのは、家庭運営においてのみではない。私事ながら、僕は数年前に脳卒中を発症して高次脳機能障害を抱えることとなり、病前にできた当たり前のことが信じ難い程にできなくなるという絶望的な経験をした。小さな交渉ごとや手続きごとができなかったり、簡単なスケジュールの組み立てすらできなくなり、そこで妻の支えがなく独りぼっちであったなら、とても乗り越えられなかったと思っている。ちなみに高次脳機能障害とは症状として認知症と合致すると言われている。独りぼっちとは、実は生死を左右しかねない大きなリスクなのだ。

 けれどもそこで、シニア婚の活況である。初婚ケースもあろうが、やはり熟年離婚後の女性もまたプレイヤーであることは確かだろう。一度男に見切りを付けた彼女たちはきっと、経済力や地位のみで男を選ばない。ならば選ばれるのは誰か?

 今試されようとしているのは、高齢男性のモテ力、女という性への理解なのかも知れない。