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森岡 英樹
2018/02/12

ゼロックスを買収 富士フイルム・古森会長“力の経営”は成功するか

古森氏は東大アメフト部の3期生 ©文藝春秋

 富士フイルムホールディングス(HD)が、米の名門ゼロックスを買収し、今秋をめどに日米で分かれていた事務機器事業を統合する。世界最大の事務機器メーカー誕生に、市場は株価急騰で応えた。

「ゲームチェンジだ」

 買収発表直後の日経新聞のインタビューで古森重隆富士フイルムHD会長兼CEO(78)はこう豪語した。古森氏は富士写真フイルム(当時)に入社し、カメラ、フィルムの会社から複写機、医療・医薬などへの業態転換を成功させた。中興の祖にして、今なお“ドン”として君臨する。

 古森会長の部屋には「力」の文字が掲げられている。満州から引き揚げて育った長崎での体験、そして東大アメフト部で学んだのは、「闘え! 闘う事を恐れる者は敗れ滅び去って行く」との確信だった。

 古森氏は経営者に求められる資質として「マッスル・インテリジェンス」をあげる。必要なのは、頭のよさではなく、野性的な勘、勇気、気迫、ロマンだというのだ。今回も、その一端が見てとれた。

 富士ゼロックスは、富士フイルムHDと米ゼロックスの合弁会社だった。今回の買収では、富士フイルムが出資を引き揚げ、富士ゼロックスは米ゼロックスの完全子会社になる。そして、富士フイルムは引き揚げた出資金を使って、米ゼロックスを買収する。こうして、富士フイルムは、キャッシュを使わずに、米ゼロックスと富士ゼロックスを掌中に収めたのだ。

「実は、富士ゼロックスは子会社ながら、もともと外資の合弁で始まったことや、稼ぎ頭でもあったことから、富士フイルムから独立の気風も強かった」(メガバンク幹部)

 買収計画は1年半前から極秘裏に進められた。

「昨年、富士ゼロックスの海外子会社で不正会計が発覚。これを機に古森氏は富士ゼロックス経営陣を交代させ、自らが代表取締役会長に就いた。そして、今回の買収で富士ゼロックスの完全支配を達成したのです」(同前)

 買収と同時に、富士ゼロックスでは国内外で1万人の人員削減が決まった。

「45歳以上を対象にリストラが始まる。明るい社風も変わってしまう、と社内は沈滞ムードです」(同社社員)

 古森氏の“パワープレー”は今回も成功するのか。