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会計士が語る「本当に良い企業を見抜く2つのポイント」とは?

所持金1万円、50歳のAさんは死ぬまでに1兆円を手に入れられるか

2018/02/14

1万円が1兆円になるまで104日

【表】Aさんの資金が増えていく過程 出典:『やっぱり会計士は見た!』

 この話は極端なフィクションですが、貧しいはずのAさんは、きわめて短期間のうちに、とてつもない大富豪になることがわかります。

©近藤俊哉/文藝春秋

効果的に稼ぐたった2つのポイントとは 

 Aさんの話には、効果的に稼ぐためには何が必要かというポイントが織り込まれています。すなわち、効果的に稼ぐためには次の2つのポイントが大切なのです。

(1)「利幅の厚い」商売をすること

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(2)「資本の回転速度」を高めること

 まず、(1)の「利幅の厚い」商売をすることは、誰にでも理解できる話です。Aさんは20%のマージンをつけていましたが、一言で言うと「できるだけ安く仕入れてできるだけ高く売ることで、稼ぎを増やす」ということです。

 例えば、ブランド物のバッグは無名のメーカーのバッグよりも高く売れます。ブランド力があれば、たとえ安価な塩化ビニール製であっても、無名のメーカーの上等な革製よりも高く売れることもあるのです。これが利幅の厚い商売ということです。

 次に意外に知られていないのが、(2)の「資本の回転速度」を高めるということでしょう。

 ここで紹介したAさんは、利幅の厚さの点ではそれほどではなかったものの、資本の回転速度が異常に速かったのです。

 つまりAさんの場合、朝に事業へ投入した資金をその日のうちに、20%のマージンをつけて全額現金で回収していることが驚異的なのです。現実の商売では、これは簡単なことではありません。

 例えば製造業の場合、材料を購入し、これを製造工程に投入し、製品を完成させて販売し、さらに代金を回収するのに、少なくとも数カ月かかるのが常識です。しかし、Aさんはたった1日しかかからなかったのです。

 ここではあえて非現実的な例として、Aさんのケースを紹介しましたが、この資本の回転速度は企業の盛衰に直結することなのです。

 すでにお分かりかと思いますが、この「利幅の厚さ」「資本の回転速度」こそが、企業が本当に優良か、そうでないかを見抜くポイントです。

 この2つの視点から、各企業の決算書(損益計算書、貸借対照表など)を読み解いていくと、「その企業がどうやって稼いでいるのか?」「上手に商売をしているのか?」といったことが見えてくるのです。

©iStock.com

 また日経新聞など経済メディアで目にする、ROA(総資本利益率)、ROE(株主資本利益率)といった一見難しそうな指標もこの「利幅の厚さ」と「資本の回転速度」をもとに計算されています。

 そしてそういった視点で企業の決算書の数字を見ていくことで「ヤマト運輸が大口顧客であるアマゾンとの取引から一部撤退したのはなぜなのか?」「金融事業が急成長したイオンの利益が伸びない理由は?」「百貨店業界首位の三越伊勢丹が、はるかに売上高の少ないZOZOTOWNのスタートトゥデイに株価で大きな差を付けられた原因は?」……などの日ごろ耳にするニュースの舞台裏がよく分かってくるのです。

 会計情報に明るくなると「貨殖の才」に磨きがかかります。ぜひ会計情報を日常生活にいかしてもらいたいと思います。

やっぱり会計士は見た! 本当に優良な会社を見抜く方法

前川 修満(著)

文藝春秋
2018年2月13日 発売

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