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ロイヤルファミリー・金正恩実妹の登場で激しさを増す平昌五輪の“外交競技”

韓国社会の関心はもっぱら「場外」に

2018/02/09

 いよいよ第23回冬季オリンピック平昌大会が始まった。

 92カ国・地域から2925人が参加する冬季オリンピック史上最大規模の大会となり、韓国にとっては1988年のソウル夏季オリンピックから30年ぶりの大舞台、のはず。

 しかし、関心は大会そのものよりもっぱら「場外」に注がれている。

どんなメッセージを携えてくるのか

2月9日、金正恩委員長の専用機「大鷹2号」で韓国の地を踏んだ金与正第一副部長 ©共同通信社

「場外」での最大の関心事は、米国と北朝鮮が接触するか否かだ。

 2月7日、金正恩朝鮮労働党委員長の実の妹、金与正(キム・ヨジュン)党中央委員会第一副部長が2月9~11日の訪韓団の一員として派遣されることが分かると、「米朝対話が現実味を帯びてきた」「制裁を解除させ、韓米を引き離そうという策略」などと韓国は騒然となった。

 中道派の韓国全国紙記者が解説する。

「金与正第一副部長の訪韓は、金日成から連なる北朝鮮ロイヤルファミリーの『白頭血統』が初めて韓国の地を踏むことを意味します。金正恩委員長がいかに平昌オリンピックに賭けているかが読み取れます。

『(平昌で)米国と対話は行うつもりはない』と朝鮮中央通信が報じましたが、明らかに米国との対話を視野に入れた人選です。金与正第一副部長が金正恩委員長のどんなメッセージを携えてくるのか、それに米国がどう対応するのか、舞台は“外交競技”となりました」

金正日は妹をこれほど重用しなかった

 金与正第一副部長は、2011年12月、故・金正日総書記の葬儀で初めて姿を現わし、最近では金正恩委員長の視察に随行する姿もキャッチされていた。米国当局は、1989年9月26日生まれとしているが、韓国では1987~89年の間に生まれたといわれ、1990年代後半から数年間、スイス・ベルンの小学校に留学し、金日成総合大学特設クラスを卒業したと伝えられる。結婚し出産したという噂も流れたが、独身であるという説もあり真相は定かではない。

 2016年5月の朝鮮労働党中央委員会で党中央委員に選出され、昨年10月の同大会では政治局委員候補に昇進。主に金正恩委員長の位相を高める宣伝・煽動担当とされ、年明けに第一副部長に就くなど異例のスピード出世を重ねており、「金正日は妹の金敬姫をこれほど重用しなかった。金与正が金正恩から信頼されていることが伺える」(北朝鮮専門家)という。

 大役者を韓国に送り込む一方、北朝鮮は2月8日、人民軍創建日の軍事パレードを予定通り行った。金正恩委員長らが出席し、1時間半ほど行われ、米国の首都・ワシントンまで到達するといわれる新型大陸間弾道ミサイル「火星15」などが登場した。国営朝鮮中央テレビは生中継ではなく録画した映像を放映したが、そこに金与正第一副部長の姿は映っておらず、「訪韓に配慮したものと見られます」(同前)。