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“五輪2大会2冠”北島康介
すがすがしい引退劇の舞台裏

source : 週刊文春 2016年4月21日号

genre : エンタメ, スポーツ

引退会見では笑顔を見せた
Photo:Jiji

 競泳の男子平泳ぎで“五輪2大会連続2冠”という偉業を達成し、5大会連続での五輪出場を目指していた北島康介(33)がリオへの切符を逃し、引退を発表した。

「北島はリオ五輪代表選手選考を兼ねた日本選手権で100、200メートルの平泳ぎに出場しました。代表になるためには決勝で2位以内に入り、同時に日本水連が定めた五輪派遣標準記録を突破しなければなりませんが、100メートルは決勝で2位に入ったものの派遣標準記録に0秒30及ばず。200の決勝は5位に終わった。プールサイドに座り込んで俯(うつむ)いていた姿が印象的でした」(スポーツ紙記者)

 北島に引導を渡す形になった「五輪派遣標準記録」とは何か。

「2000年のシドニー五輪で代表選考に漏れた千葉すずが反発して大騒動に。それを反省し、過去3年間の各国の有力選手のタイムから五輪で予選突破できる記録を日本水連が独自に算出したものです。アテネ五輪の代表選考から導入されて、この方法が最近の日本競泳の強さのベースになっているとも言えます」(同前)

 北島を長く取材してきた、ベテラン五輪担当記者が言う。

「マラソンなどは複数の選考レースがあって、それにタイムや陸連の“主観”も加わるので選考でいつもゴタゴタする。でも水泳は一発勝負で順位とタイムをクリアしないとダメで分かりやすい。北島自身もダメだったら潔く身を引くという、お手本のようなすがすがしい引退でした」

 4月10日に開いた引退会見で、北島はこう語った。

「『チョー気持ちいい』って言葉は、泣きたかったのを我慢して言いました。それで流行語大賞を取れたのが、自分でも不思議でした」

 前出のベテラン記者が振り返る。

「あの言葉を聞いた人は『軽いな』という印象を持ったと思います。確かに北島はああいう言い方をする東京の下町のお兄ちゃんではありますが(笑)、競技においてはあの言葉とはギャップのある真面目な男でした。あれだけの実績がありながら自分を追い込んでガンガン練習しますから、居るだけで若手にいい影響を及ぼしていた」

 リオは20年ぶりに北島のいない五輪になる。見ているほうは“何とも言えねぇ”気分になりそうだ。