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梶原 紀章
2018/02/12

プレー以外でも“大物ぶり”を発揮するロッテのドラ1ルーキー・安田尚憲

文春野球コラム オープン戦2018

 スーパースターの匂いがする。2017年ドラフトでマリーンズがドラフト1位指名した安田尚憲内野手(履正社高校出身)である。高校通算65本塁打。東の清宮幸太郎(ファイターズ)、西の安田と高校時代から注目を集めているから当然は当然だ。ただ、もう1点。スターの貫禄を感じることがある。それはトーク力。プロ野球の世界で仕事を始めて20年となる私の私見ではあるが、一流の選手は総じてインタビューなどでの話が面白いと感じている。そういう意味では、この若者は取材相手がどんな答えを待っているのか、どんな話をすれば喜ぶのかをしっかりと把握しているように感じる。いや実際に分かっている。

練習後の囲み取材に応えるルーキー安田 ©梶原紀章

「これ、見出しになりますよね」

 こんなことがあった。1月10日。毎年恒例の広報による新人選手に対してのマスコミ講座をロッテ浦和寮で行った。その中で昨年12月に行われた新入団会見での新聞報道記事を取り上げた。スポーツ紙の見出しは「安田、千葉のゴジラになる!」である。安田がジャイアンツ、ヤンキースなどで活躍をした松井秀喜氏に憧れていることを口にし、自分もそのような存在になりたいとコメントしたことで、この報道となった。よくある事ではあるが普通の新人は自分の発言をマスコミがどのように受け取り、どのような報道に進展するかまでは理解していない。ただ安田は「きっと次の日の新聞はそうなると予想してコメントしました」とキッパリと言い放った。100人を超す報道陣の前で、自分のコメントを計算して口に出す。大した新人だと驚いた。

 石垣島春季キャンプ最初のオフとなった2月5日にも似たようなことがあった。練習がないことから報道する話題に困るマスコミのために新人選手たちが観光しているところを取材してもらうのがプロ野球の定番行事。今年は竹富島での水牛観光を行った。終了後、取材に応えた安田は「水牛のようにパワーをつけたい。下半身を強化したい。これ、見出しになりますよね」と笑い、私の方を振り向いた。そもそも「見出しになる」という新聞業界の用語を教えたつもりもない。ただ本人はしたたかに計算してスポーツ紙の記者に喜ばれるコメントを用意していた。プロで数年ほど活躍した選手がようやく理解をするようなことを高卒1年目の新人が自然に理解しているのだから末恐ろしい。

 思えば彼はいつも取材にしっかりと対応をしようとする姿勢があるし、取材を苦にしない。カメラマンがカメラを向けるとすぐに笑顔を作る事も出来る。新聞記者が練習上がりの自分を取材したいと待っていることも分かっているかのように記者の方に自分から寄っていく。それはもはや十分にスター性と呼べるものだと私は思う。