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小島秀夫が観た『シェイプ・オブ・ウォーター』

映画に愛された“シェイプ・オブ・クリエイター”の物語

2018/02/25

genre : エンタメ, 映画

「“愛と映画”を深く愛する人のために作った」

 2017年11月、東京国際映画祭での『シェイプ・オブ・ウォーター』上映前のビデオメッセージで、ギレルモ・デル・トロ監督はそう語った。

 すでにヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞するという快挙を成し遂げた本作だが、その栄誉に恥じない、デル・トロ成分120%の傑作だった。

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(C)2017 Twentieth Century Fox

「デル・トロというジャンル」

 さらに、ゴールデングローブ賞でも最多7部門にノミネートされ、監督賞と作曲賞の2冠に輝いた。放送映画批評家協会賞では、最多の14ノミネート、作品賞、監督賞など4部門で受賞。既に、いくつもの映画祭や賞でノミネートや受賞を果たしている。

 第90回アカデミー賞において最多13部門にノミネートされているのにも納得の作品である。アカデミー賞の栄光に最も近いと言えるだろう。

 そこには“愛と映画”を深く愛するクリエイター、ギレルモ・デル・トロの全てが詰め込まれ、溢れ出していた。

 サスペンス、バイオレンス、エロティシズム、さらにユーモアや、喜びと哀しみまで、映画が与えてくれるあらゆる要素が入っている。加えて、マニアックでオタク的なネタもちりばめられていて、それでもなおキュートな作品なのだ。さらに、人種(レイス)、ジェンダー、マイノリティーなど、現代的で社会性のあるテーマを語っている。特定のジャンルでくくれない稀有な作品である。

 映画の冒頭に「a Guillermo del Toro Film」というテロップが入る。これはまさに、デル・トロにしか作れない、「デル・トロというジャンル」の映画であることの証なのだ。

ギレルモ・デル・トロ ©getty