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東海テレビに注目! 「このドキュメンタリーがすごい」会議【前編】

大島新×佐々木健一×土方宏史 “尖ってる”ドキュメンタリストが語り尽くす

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固い、真面目だけが「ドキュメンタリー」じゃない! 今、日本のドキュメンタリーを面白くしている注目の3人が初めて集まりました。テーマ、手法、その独特の方法論を語り尽くします。(全2回)

左から東海テレビ・土方宏史さん、ネツゲン・大島新さん、NHKエデュケーショナル・佐々木健一さん

従来のドキュメンタリーの風潮に必死で抵抗している

佐々木 3人がこうして集まるのは初めてですが、お互いのことはそれぞれ知っていたんですよね。僕は大島さんのお名前を『情熱大陸』の秋元康さんの回とか、面白い番組を観るたびにやたらとスタッフロールで拝見していて、「いつか会いたい、会いたい」と思っていたんです。

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大島 それで半年くらい前に飲んだんですよね。いま僕はネツゲンという制作会社を経営していますが、もともとはフジテレビで『NONFIX』とか『ザ・ノンフィクション』のディレクターをしていました。その時代に仲良くしていた人が、佐々木さんとも縁があって繋がった。佐々木さんには『ケンボー先生と山田先生』という、辞書をめぐる2人の国語学者の人生を追った作品などがありますが、とにかくこの人は従来のドキュメンタリーの風潮に必死で抵抗している人だなって思った。手法的にも、テーマ設定の仕方にしても。

佐々木 僕は主にNHKで放送される番組を制作していますが、ドキュメンタリーと言えば「安っぽいけど、生々しい映像をカメラをぶん回して撮っているもの」みたいな、型にはまったスタイルが嫌いなんです、偏見かもしれないけど(笑)。

佐々木健一さん

大島 そう、佐々木さんは腰が低いんだけど、こういう我の強さがある。だから「腰の低い俺様野郎」って呼んでるんだけど(笑)。

佐々木 「おしゃべりクソ野郎」みたいな仇名を頂戴しましたけど(笑)、そんな意識を共有できるだろうと僕が勝手に思っているのが、常に新しいドキュメンタリーを生み続ける大島さんと土方さんです。

土方宏史さん

土方 佐々木さんとはこの間、あるシンポジウムでご一緒して以来のお付き合いです。大島さんとは、台湾料理屋で偶然お会いしたんです(笑)。僕は東海テレビの報道局に所属していますから、普段はもちろん名古屋勤務なんですが、たまたま打ち合わせで上京した時に入ったお店で……。

大島 そうそう、ドキュメンタリーの世界では今をときめく東海テレビの方にお会いしてびっくりしましたよ。プロデューサーの阿武野(勝彦)さんもご一緒でしたよね。

土方 はい、僕の上司です。