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東海テレビに注目! 「このドキュメンタリーがすごい」会議【前編】

大島新×佐々木健一×土方宏史 “尖ってる”ドキュメンタリストが語り尽くす

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東海テレビのドキュメンタリーが、すごい!

佐々木 大島さんの言う通り、まさに東海テレビのドキュメンタリーは今、群を抜いて面白いんですよ。映画化された作品も10作ほどあって、戸塚ヨットスクールの現在を追った『平成ジレンマ』や、愛知県春日井市のニュータウンに住む老夫婦の生活を伝えた『人生フルーツ』も話題になりましたよね。そして土方さんがディレクターを務めた『ヤクザと憲法』『ホームレス理事長』。

大島 観たときに、「あ、このディレクターは撮れる人だな」って思った。傑作ですよ。

佐々木 とにかく『ホームレス理事長』を観たときは「とんでもない作品だ!」って興奮しましたよ。愛知県常滑市にある退学球児を育てるNPO「ルーキーズ」を追った作品なんですけど、「この人、大丈夫か?」って心配になるような理事長が出てくる。次第にカメラは球児より理事長を追うようになっていき、急展開する事態に土方さん自身も巻き込まれて……。

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土方 東海テレビでは放送したんですけど、いわゆる「問題作」ということでフジテレビさんからは放送謝絶のお返事でした。そこで映画公開という形で全国展開したんですが……。

大島 どれくらい入りました?

土方 5000人くらいです。東海テレビのドキュメンタリー映画で一番当たらなかったと思います。東京の「ポレポレ東中野」で上映した時も、初日は10人とかで。

佐々木 えっ、初日10人!?

土方 その日、雪が降ったこともあったとはいえ、そんな状態だったので映画館の人も劇場内で「みなさん、前に集まってください」って呼びかけてました(笑)。僕はもともと制作部というバラエティや情報番組の部門にいたんですけど、そこからはじき出されて、今は報道局の隅っこでドキュメンタリーを撮っています。でも、何か自分に足りないところもあるだろうし、今日はいろいろ勉強したいと思ってます。

『ホームレス理事長』より、外で着替える理事長 ©東海テレビ

佐々木 いやいや、僕も同じですよ。そこで大島さんにお聞きしたいのは、『情熱大陸』の大島さんの作品って、実はあんまり人に密着してませんよね? あの番組は旬の人を追いかける人物ドキュメントですが、移動中とか、プライベートなどを追いかけ回すことは控えている感じがします。どうしてですか?