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アパグループも被害に 詐欺集団「地面師」の手口

 錠前破りに手形偽造の名人、何年も前から商店に潜入する引き込み役……。江戸中期を舞台に「鬼平犯科帳」が描く盗賊団の周到な手口は痛快ですらあるが、平成も終わろうとする今、異能の犯罪集団が大企業から数億、数十億円単位でカネをせしめていることはもっと知られていい。

 その名も「地面師」。不動産詐欺集団だ。

 警視庁は6日、偽造印鑑登録証明書を使って土地の登記をしようとしたなどとして、偽造有印公文書行使などの容疑で、地面師集団の頭目の1人、宮田康徳容疑者(55)ら5人を逮捕した。警視庁担当記者が解説する。

「宮田容疑者らは病院が所有する品川区の土地の権利を持っているとみせかけて、3億円超をだまし取った疑いも持たれています。その過程で土地登記をしようとしたところ、間一髪のところで法務局が不審に思い未遂に終わりました。証明書は精巧に偽造されていたといいます」

「地面師」とは聞き慣れない呼称だが、歴史は少なくとも戦前まで遡る。土地の権利書などをごく初歩的な技術で偽造し、土地=地面をめぐって詐欺を働いた連中をこう呼んだのが始まりだ。現在はめぼしい土地を見つける不動産業者、買い手を見つける経営コンサルタント、手続きを進める司法書士から所有者になりすます下っ端まで、役割はさまざまに細分化されている。

「角度によって色が変わる自治体の書類すら偽造できる印刷所まで抱き込んでいるとみられています。求めに応じて一見ちゃんとした証明書が次々に出てくるため被害者も信じる。宮田容疑者は数ある集団の頭目の一人ですが、そんな頭目格が何人もいて、案件ごとに合従連衡するため、尻尾がつかめません」(同前)

 宮田容疑者はホテルチェーンのアパグループから同様に12億円超をだまし取った詐欺罪で起訴済みだが、捜査関係者は、それは氷山の一角に過ぎないとため息をつく。

アパグループに対する詐欺の舞台となった土地(東京・赤坂) ©共同通信社

「積水ハウス、アパ、旧村上ファンド系の関係者。いずれも地面師に数億円から数十億円をだまし取られた、被害者リストのほんの一部。カネ余りに低金利、地価高騰などに乗じて地面師が息を吹き返した。被害が多すぎて、捜査班の人数が足りないほどだ」

 あと足りないのは平成の鬼平、か。