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連載近田春夫の考えるヒット

「英語なら超カッコいいのに」GLIM SPANKYの本領とは――近田春夫の考えるヒット

2018/02/21

『愚か者たち』(GLIM SPANKY)/『東京』(JUJU)

絵=安斎肇

 GLIM SPANKYに関しては前にも楽曲の感想を述べたことがあったと思うが、そもそもはネット上にあった、ボーカルの松尾レミが歌うジャニス・ジョプリンの『move over』をたまたま観たのがきっかけであったかもしれない。かつて内田裕也&ザ・フラワーズに在籍していた頃の麻生レミを彷彿とさせる、野太くて伸びのある、まさしく“ロックな”歌唱に感銘を受け、是非ともオリジナル曲を聴いてみたい! と。そう思っていた矢先に新曲が出たのではなかったか? で早速取り寄せてもらったと記憶するが、経緯はともかく、その楽曲にそれほどの興奮は得られなかったことを思い出す。

 はてさてそんな事情もあって、期待半分不安半分にて拝聴の『愚か者たち』だったのであるが、結論から申せば、今回もまた同じような感想を述べなければならないこととなってしまった。

 ただまぁ、俺がそれこそ多感な十代の頃に崇めるようにして聴いていたロックのマスターピースをものの見事に歌い切ってみせた実績を持つボーカリストなのである。シングルの仕上りに期待してしまうというか、ついつい点も厳しいものになりがちというか、俺の意見にいささか感情に走り過ぎのキライのあるのも致し方なし、といいましょうか……ねぇ?

愚か者たち/GLIM SPANKY(UNIVERSAL)2014年メジャーデビュー。本曲でシングルは3枚目。今年5月に初の武道館公演。

 とかなんとか考えながら再度曲を聴くうち、俺の不満の輪郭が少しずつ見えてきた。

 ひとことでいってしまえば、松尾レミの声を活かしきれていない。彼女が本領を発揮させられていないように、どうしてもそう思えてしまうのである。

 そこまでは分かった。では彼女の本領とは何なのか?

 ひょっとして、この人は英語で歌うときほどには、日本語でのパフォーマンスにおいては魅力のアピールが難しい、ということはないだろうか?

 実際、英語で歌えばリスナーを魅了し尽くしてしまうような(日本人の)ジャズシンガーとかが、日本語で曲を披露し始めた途端、会場の雰囲気がガクッと“盛り下がる”といったことは、俺も客としてなんども経験している。そのロック版なのかいなと。

 いやホント。グループサウンズ華やかなりし頃にも、英米曲のカバーを歌わせると超カッコいいのに……っていう伝説のボーカリストは何人もいたものである。

 そんな時代とは違い、いまや、日本語で歌うことをせずとも充分に商売の成り立つ人気者も結構いるわけだし……と、そんなことを思ってしまったのだった。

 そういえば前述の麻生レミ。日本語オリジナル曲では、英語で歌うときとはまた別のいい具合の味わいを発揮していたので、一度、試しにそんな曲(『ラスト・チャンス』)をカバーしてみて向き不向きをチェックっつうのもアリかも。

東京/JUJU(SONY)頑固ものの父のもとから美容師を目指す娘が上京して…というネット公開のMVが話題に。

 JUJU。

 手堅くカタログを増やしていっている感じ。もう少し下世話な歌謡曲も聴いてみたいと思わせる声のひとである。

今週の音楽ビジネス「ネットニュースで知ったんだけど、アメリカの最大手家電量販店のベストバイが、CD取扱をやめるんだってね。千店以上あるのに、売上げが40億程度に落込んでいたのだとか。もうアメリカではデジタルの方が売上げ大きいみたい」と近田春夫氏。「このニュース、日本のメディアで全然聞かないの、はたして良いのか悪いのか(笑)」