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連載THIS WEEK

名越 健郎
2016/07/30

クーデター鎮圧もトルコ内政不安
安倍外交にも打撃

source : 週刊文春 2016年8月4日号

genre : ニュース, 国際, 政治

昨年トルコ訪問時の安倍首相とエルドアン大統領
Photo:Kyodo

「テロ組織に関係する者を全て排除する」

 死者300人以上、拘束・解職6万人以上を出したトルコのクーデター未遂事件で、エルドアン大統領は、3カ月間の非常事態宣言を出した。

 軍の決起翌日には「民主的体制を尊重し、秩序を回復すべきだ」と発言し、早々にエルドアン支持を表明した安倍晋三首相にとっては、ひとまず“最悪の事態”は回避された。

「官邸は気が気でなかった。情報連絡室を設置したり、外務省に細かく指示を出していました」(政治部記者)

 親日国のトルコは安倍政権下で同盟国並みの関係に発展した。日本の自動車メーカーの生産拠点となり、橋や地下鉄などインフラ輸出のドル箱に。今後は原発輸出や戦車部品の輸出も噂されていた。

 この友好関係は、安倍首相とエルドアン大統領の個人的親交が基礎になっている。保守派同士、ケミストリーが合うのか、両首脳は相互訪問を繰り返している。昨年11月にも安倍首相はトルコを訪問、19世紀末に和歌山県沖で遭難したトルコ人の救出を描いた映画『海難1890』を揃って鑑賞した。安倍首相はエルドアン大統領やプーチン・ロシア大統領ら強権型独裁者とのつきあいが得意なようで、昨年トルコ機がロシア機を撃墜して両国関係が険悪化した際、仲介の用意を申し出たこともある。

 それだけに、クーデターでエルドアン政権が崩壊していれば、安倍外交に重大な支障が生じるところだった。

 外交筋によれば、日本とトルコは密かに機密情報協力も行っており、日本は過激派組織「イスラム国」(IS)の情報をトルコから入手し始めた。トルコはISの石油密輸ルートになっており、IS情報を得られる立場にある。

 IS関連の大型テロはこのところ、ダッカ、仏ニース、米フロリダ州、独ミュンヘンと毎週のように世界各地で頻発する。ISは欧米と組む日本も標的にすると警告しており、2020年東京五輪を控え、エルドアン政権との情報協力がますます重要になる。

 ただし、今回の反乱が収まっても、軍部の不満はうっ積しており、将来新たな反乱に発展する可能性もあろう。安倍外交はトルコ内政に左右されかねない。

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