文春オンライン

「インスタ映え」×「ポジティブ思考」が作るネット内ムラ社会

お前ら本当にそれ楽しいの?

2018/02/22
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「かわいい」「すごい」それ、本気で思ってるのかな

 さらには「私は私らしく」やら「ひたむきに生きている私が好き」やらの自己肯定ワードがちりばめられた何も言えねえ感じの糞コメントが量産されているのはもはや公害とも言える社会問題ではないかと思います。お前の生き方なんか知らねえよ馬鹿。何か買うと「自分にご褒美」とか言ってるし、レストラン行って「人生最高の時」なんてのを夜泣きしてる子供寝かしているときに見ちゃうと血圧が上がるんですよね。そのまま温泉で茹でられてろ。そのように思うわけであります。

 そして、そこについてる友人たちのコメントがまたグルーミング。犬見れば「かわいい」、何かしてれば「凄い」、プールやパーティーで自撮りしてれば「綺麗」。まあ、他に言うことないからしょうがないんだけどさ。それ、本気で思ってるのかな。羨ましいとか思わないのかな、仕事帰りにメイクも崩れて半分パンダみたいになってるお前が友人のドレス着飾った画像とか観てさ。

©iStock.com

 でも押すのは「ハート」。もうね、いいんだよ。頑張ったんだね。幸せをアピールして、グルーミング先にマウント取りたかったんでしょ。分かるわ、その気持ち。そういう幸せな時間も胸に抱いて、ストレスフルの社会で前向きに生きていく燃料にして進んでいくんですよ。悪いときや辛いときにinstagramに画像なんて上げる気分にならないもんね。

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パーティーピープルには社会保障費負担の明細を見せてやれ

 やっぱりInstagramに必要なものは、火炎放射器もったモヒカンが馬乗って闖入してくる、そういう躍動感ですよ。お互い褒め合って、胴上げし合ったまま大気圏突破しそうな軟弱なインフルエンサーのところへ殺到する蛮族の群れ。村は焼かれ、灰に塗(まみ)れて命からがら逃げだしてきたインスタグラマーがすべてを失って呆然としているさまが見たい。

 さあ、銃を取れ。スカした画像を掲載して満面の笑みと自己肯定感に溢れたあの軟弱なクズどもに現実を見せてやるんだ。着飾ったオールドミスに婚活の厳しさを、楽し気に浮かれるパーティーピープルには増大し続ける社会保障費負担の明細を、遊び惚ける大学生には志望動機・特技が書けない就職活動の恐ろしさを。

 ネットが正しく世の中の縮図であるためにも、そういう修羅もきちんと実現していかないといけないんじゃないかと、ネットの修羅な部分に暮らす私はいつも思っております。だから、お前ら口ではいろいろ言うけど派手に文春砲が打ち上がったら喜んで文春買うだろ。綺麗事は綺麗事として弁えつつも、己の中のゲスとも向かい合えよ。光あれば闇あり。他人の幸運も祝福したり物欲しそうな顔したりしながら、退屈せず日々を生き抜いていくのです。いずれ、精神も失われ、肉体がガスとなって地球と混ざり合うそのときまで。

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