文春オンライン

「小室事変」について、鈴木涼美から2、3の意見

誰がために不倫の警笛は鳴る

2018/03/02

野次馬だったはずの観衆が、当事者を庇おうとする瞬間

 人は愚かで、嘘つきで、利己的で、浅はかだ。成功者の失敗が大好きで、人の足を引っ張り、嫉妬心をすぐに恨みに変え、自分の幸福に繋がらない人の不幸まで楽しむ。これからも、不倫報道を「飽きた」「どうでもいい」なんて言いつつちゃっかり受け取り続けるのだろうと思う。だって、不倫なんて本当に第三者からすれば死ぬほどどうでもいい、しかし、本人たちにとってはダメージの大変強いものであって、小説にして楽しんだり、映画にして味わったりするのとほとんど同じテンションで、外からヤンヤヤンヤと言い続けられるからだ。

©iStock.com

 それでも、何かの境界に触れようものなら、野次馬だったはずの観衆が一気にそっぽを向いて、当事者を庇おうとするのだ。それはある意味、人間の善意に対してとても心強い気持ちにさせられることで、悪人になりきれないその情けなさがややバカ丸出しで無意識的であったとしても、なんとなく気分が明るくなる。

 不倫は触れてはいけないところと、どんどん触れてもすり減らないところを見分ける試金石になりうる。そういった意味ではベッキーや乙武洋匡や円楽師匠が、いかに盤石だと信じられているか、というまた別の意味での明るさも提示しているように感じた。

「小室事変」について、鈴木涼美から2、3の意見

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