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裁量労働制は、働かないおっさん対策にもなるはずなのに

変わらない日本の封建的労働環境

2018/03/01
note

「中途採用でもいい人材を採用できます」

 さらには、そういうところに人材を紹介する会社が広告で平然と「中途採用でもいい人材を採用できます」というクソみたいなコピーを掲げて、あたかも中途採用は新卒採用に劣るかのような宣伝もしておるわけです。中途採用を売り込みたい業者の都合という意味では分からなくはないけれど、ここまでくるとやはり戦後の日本の組織と、日本人の働き方は早々に変えていかないといつまでも幕藩体制下の武士のような封建制度から抜け切れないんじゃないかと思うわけですよ。

 何しろ、大河ドラマはその性質上、日本の歴史を扱うわけでして、戦国時代や幕末を繰り返し題材とするのが当然である以上、みんな喜んで観るのが日本の中世の物語にならざるを得ないわけですよ。そこへ、きちんとした時代考証を経た、歴史的になるだけ正しい物語を実現しようとするほど、古き良き日本の文化とされるものが、プロジェクトXも真っ青の立身出世と組織への献身、苦労への無原則な挑戦を美とする、実に不思議な価値観を社会に醸成することになるのではないかとすら思います。そろそろ大河ドラマも太平洋戦争や鄭成功を扱うべきだと感じるんですけどね。

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裁量労働制の話が、実労働時間の議論になっている残念さ

 国会に目を転じると、10年越しで裁量労働制の話をしています。どこかの組織に属して下働きをしてサラリーを得る生活をしていない私でさえ、時給で働く個人の切実な生活の問題は気になるので、国会論戦の中身を見て一喜一憂しています。もちろんデータのミスはいかんだろという大前提のもとで、労働組合も頑張り方がもっとエレガントであってほしいし、働き方改革は賃金の払い方だけでなく、フリーランスや高給専門職、必要だけど人気のない介護職などなど多くのものを同時に満足させられる統一的な労働政策にまでもっていかざるを得ず、全員の合意で進められる性質のものでもないよなあと感じます。立命館大学教授の上久保誠人せんせが喝破しておられたように、本当は量よりも質であるべき裁量労働制の話が、実労働時間がどうであるかの論戦に費やされ、与党は出鱈目で野党は硬直化しているという「いつもの我が国の国会」になっているようであるのは残念であります。

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裁量労働制の国会論戦は与野党ともに論点がずれている | 上久保誠人のクリティカル・アナリティクス | ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/161336

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