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連載THIS WEEK

森岡 英樹
2016/12/23

鬼検事ついに退任
SESCを活性化させた佐渡改革

source : 週刊文春 2016年12月29日号

genre : ニュース, 経済

「不正は必ず摘発するという機関に」と退任の弁
Photo:Kyodo

 12月12日、証券取引等監視委員会(SESC)の佐渡賢一委員長(70)が退任した。在任期間は歴代最長の3期9年に及んだ。

 佐渡氏は、東京地検特捜部時代にリクルート事件や金丸信自民党副総裁(当時)への5億円ヤミ献金事件などを捜査した敏腕検事だった。

 2007年、SESC委員長に転じた佐渡氏は、「検察の下請け」と揶揄されていたSESCの大手術に踏み切る。

「それまでSESCは、特別調査課に出向した3人の検事が情報を握り、他部署は後回しだった。特調が全てを仕切る体制でした」(SESCに出向経験のある金融庁関係者)

 佐渡氏は、情報をまず市場分析審査課に集約し、機能ごとに各課に割り振る体制に改めた。その過程で、反対する出向検事を更迭する荒療治も行ったという。

 佐渡氏が駆使したのが、課徴金制度と偽計罪の積極適用だった。

「摘発が難しいとされてきた、経営不振企業を舞台にして投資家から資金を騙しとる“不公正ファイナンス”を次々に偽計取引で上げた。また、増資マフィアと呼ばれる人物を続々刑事告発して、業界を驚かせました」(社会部記者)

 この過程で、SESCの職員も力をつけていく。

「佐渡委員長の積極姿勢で士気も高まり、調査スキルもあがっていった。また、外資系金融機関から女性を採用して抜擢し、他国の関係機関とのパイプを太くして、国境をまたぐ金融犯罪の摘発にも着手していました」(同前)

 退任直前には、三菱UFJフィナンシャル・グループ系のモルガン・スタンレーMUFG証券に相場操縦で約2億2000万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告するなど、最後まで積極姿勢を貫いた。

 対照的に古巣の東京地検特捜部はすっかり牙を抜かれ、政治家や大企業の摘発には及び腰だ。東芝の不正会計問題では、歴代三社長の刑事告発を巡り、消極的な特捜部とSESCとの対立が表面化した。

「特捜部の一線の検事が、『仕事がしたい』とSESC出向を希望するような事態も起きていたそうです」(同前)

 山登りが趣味で、休日には記者と近郊の山に出かけていたという佐渡氏。退任を一番喜んでいるのは、経済犯罪者たちかもしれない。

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