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「AI時代に銀行員はどう生き残るべきか?」――冨山和彦の正解

AI経営の第一人者が未来を予測 #2

2018/03/05
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 AIやIoTが躍進する時代に、働き方はどう変わる? ビットコインなどの仮想通貨が出てくる中、銀行など金融業は? 企業再生の第一人者であり、産業界全体から見た人工知能に精通する冨山和彦さんに、これからを生き抜く心構えを一問一答式で訊く、全5回シリーズの第2回(#1「AI時代の起業」より続く)。

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『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦 著
『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦 著

Q 金融業界で働いていますが、どのようにAI経営を進めていけばよいでしょうか。

A 既存の銀行モデルは大きく変わります。

 金融の機能には大きくふたつあります。ひとつが、決済。もうひとつが、預貸です。

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 まずは決済について。すでに世の中に存在している社会的共有資産に乗っかって、ローコストで装置化しようという動きが進んでいます。フィンテックのコアテクノロジーとなるブロックチェーンなどは、まさにその例ですね。それから、媒介の機能についても、そもそも人間が介在する必要性があるか、という問題も出てきています。裏返して言うと、既存の銀行的なモデルというのは、通信の世界で言うダークファイバー――要は管(くだ)ですね――を提供するような公共財サービスと化していく可能性がある。従来は、ユーザーよりも銀行のほうが情報を持っているという非対称性があったため、銀行がいわゆるサヤを抜く、利益を上げることができたのですが、今後はそうはいかなくなる。

冨山和彦氏 ©平松市聖/文藝春秋

 ただ、銀行業務のすべてがなくなるわけではないです。決済をやらなくてはならないし、信用媒介をやらなくてはならないから。とはいえ、付加価値をどこまで上乗せできるかというと、それは疑問です。むしろ社会的な要請としては、最低限の機能でもって安全に事故なく責任を果たす、という役回りになっていく。電力でいうところの送配電みたいなものでしょうか。となると、巨大なシステム、支店網、それらを支える多くの人員が不要となる。おそらくいろんな再編統合も起きてくる。なにしろ公共財化してしまうわけですから。そのなかで、最後に残る部分は非常にお堅い仕事になるので、銀行員の方々はその仕事を自分の役回りとして心得て粛々と行う、となるでしょう。

©iStock.com

 もしくは、産業構造論的に言うと、公共財化していくなかで、みんなが使うようなコンポーネントをつくって、それを世界中に売って儲けるという道ももうひとつあるかも知れません。

#3に続く

●講演会のお知らせ
2018年ビジネス書グランプリ グロービス経営大学院特別賞受賞!
『AI経営で会社は甦る』著者 冨山和彦さん講演会「AI経営『勝利のシナリオ』」
4月9日(月)19:00〜(18:30開場) 於文藝春秋西館地下ホール
AI時代、日本の取るべき戦略は? あなたとあなたの会社が生き残るには? Q&Aタイムあり。
お申し込み先 https://bunshunlive23.peatix.com/?lang=ja

*本シリーズは第8回「~hontoで学ぶ~」「経営共創基盤代表取締役CEO冨山和彦 特別講義『AI経営で会社は甦る』」(2017年4月17日)より収録・構成しました。  

AI経営で会社は甦る

冨山 和彦(著)

文藝春秋
2017年3月29日 発売

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