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中国の途上国支援は「釣った魚を与える」だけ?

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一押しニュース

2018/03/12

▼〈中国の一帯一路 積極的な発展途上国向け開発がもたらす影とは〉1月30日、ニューズウィーク日本版(筆者=Paritosh Bansal)

 巷間、次のような至言がある。

「お腹を空かせた人には、魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」

 私がこの言葉を初めて耳にしたのは、以前に住んでいたルーマニアであった。興味深かったのは、この言葉を教えてくれたルーマニア人が、

「これは日本の古いことわざだろう?」

 と言っていたことである。実際の出典については諸説あるようだが、この言葉を「日本のもの」と理解している人がいることを面白く感じた。

 さて、この至言だが、「一帯一路」を推し進めている中国にこそ聞かせたい。

 一帯一路は2013年に習近平国家主席が提唱した経済圏構想。この「現代版シルクロード経済圏」とも銘打たれた大計画では、該当地域へのインフラ整備や貿易促進などが積極的に目指される。中国政府は強力にこの計画を推進しており、すでに100を超える国や地域から支持や協力協定を得ているという。

©iStock.com

 しかし、このような中国の野心的な構想に対し、懐疑的な見方は根強い。ニューズウィーク日本版の記事「中国の一帯一路 積極的な発展途上国向け開発がもたらす影とは」は、理想と現実の狭間に揺れる現状を伝える興味深い内容であった。

 同記事によると、中国の強引な開発援助は、人権や環境を擁護する非営利団体(NGO)の役割を低下させ、彼らが伝統的に果たしてきた乱開発に対するチェック機能を困難にさせているという。記事ではグリーンピース・インターナショナルのジェニファー・モーガン事務局長の以下のような言葉が紹介されている。「中国による開発は、注視が必要な状況であることは確かだ」。

 これまでの西側の開発計画では、環境面や人権面で条件が付けられることが普通であった。しかし、中国の場合にはこういった要素が欠けているという。ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は、中国のアプローチについて「非道徳的」と述べている。

 一帯一路の内実が、あくまでも中国の国益を第一としたものであり、「国際社会における自国の影響力の拡大」を志向したものであることは、多くの人々が感じているところである。

 援助の内容も、具体策に欠けた杜撰なものが多いと聞く。果たして一帯一路なるものが、真に現地の人々の生活の向上に資するものなのか。すでにパキスタンやスリランカでは、中国に対する大規模な抗議運動が起きている。

 一帯一路の内実は、まさに「魚を与える」だけのものに映る。そして、「魚を受け取った者」は「弱い立場」に置かれることになるのではないか。そんな印象が拭えない。

 ちなみに、世界にはこんなジョークがある。

 とある援助団体の職員が、村人に言った。

「この森を伐採してここに工場を建てましょう。それを段階的に大きくしていけば、村の経済も徐々に発展するし、雇用も拡大します」

 それを聞いた村人は言った。

「そうするとワシらの生活は、本当に良くなるのかね?」

「もちろんですよ。生活が豊かになれば余暇もできる。そうすれば週末はのんびりとひなたぼっこでもして、ゆったりと暮らせるようになるわけです」

 村人は首をかしげながら言った。

「しかし、そんなことなら今でもしてますがね」