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連載高野秀行のヘンな食べもの

2018/03/13

“中級”の虫サンドは、虫ピザとは比較にならないインパクトだった。基本はツナサラダに虫を混ぜているのだが、調理してあるはずの虫が妙に生々しい。しかも手に持つと、パンの間から、バッタが生きているように飛び出し、アリの卵が今、産み落とされたかのようにボロボロと皿にこぼれ落ちる。ビバ、生命! という感じ。アリたまのプチュプチュ感とバッタのカリカリ感を味わうしかない。

バッタとアリたまを挟んだサンドイッチ

 そして、最後はいよいよ“上級”の虫パスタ。これはもう笑うしかないシロモノだった。「この料理を作れるのは私くらい」とシェフが自画自賛するのもわかる。

 まず、絵面が普通じゃない。真っ白のパスタと真っ赤なソース。それらと戯れる(?)ゲンゴロウやコオロギたち……。

 食べてみると、トマトソースの深い味わいに感心する。よく熟れたトマトを使って、隠し味にタイの調味料のナンプラーを加えているという。まさに土地の食材と味つけをふんだんに応用した創作イタリアンの好例! なのだが、これも虫が多すぎ。だんだん、げっそりしてくる。

 そして、いったんげっそりしてしまうと、後は食べるのがとても苦痛になってきた。ゲンゴロウがゴキブリに酷似していることもあって、残飯のパスタの上に虫がたかっているようにしか見えなくなるからだ!

「残飯を食べてる虫を食べてる俺」というイメージが脳内をぐるぐる回って止まらない。

 本場のイタリア人に食べさせて、その進化の限界を知らしめたいと心底思ったのだった。

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