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相澤 洋美
2018/03/16

羽田空港からJR東日本の駅清掃へ。63歳・正社員の女性クルーは「駅に恩返しがしたい」

東日本環境アクセスのプロフェッショナルたち #4

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 JR東日本のグループ会社「東日本環境アクセス」は、首都圏を中心とした駅や駅ビルの清潔感を保つ「清掃のプロ」として、清掃スタッフ約3800人が働いている。採用基準は、本人の思いがどれだけ強いか、の一点だけ。実際、重い更年期症状で3年間も外に出られなかった女性が、55歳で「正社員」として採用になったケースもある。

現在は、上野事業所に3人しかいない上級指導者SV(スーパーバイザー)として後進の指導育成にあたる伊藤恵子さん(左)

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 重い更年期症状で、3年間外出もままならない生活を送っていたという伊藤恵子さん(63歳)。「死」が頭に浮かぶほどの苦しい毎日に、「このままではいけない」と一念発起。ずっと生きがいだった「清掃」仕事のスタッフとしてJRのグループ会社「東日本環境アクセス」に採用されたことで、人生がよい方向に大転換したという。

「会社と仕事に救われた」と感謝を表す伊藤さん

“清掃道”を極めることは最善の人間修行

 岩手県遠野市出身の伊藤さんは、「無類のきれい好き」として地元でも評判だったご両親のもとで育った。「物心ついた時から、家の中はいつもきれいでした。でも、掃除をしろと言われたり、片づけなさいと怒られたりした記憶はまったくありません。黙ってお手本を見せてくれるような両親でした」と、伊藤さんはご両親を偲ぶ。

 伊藤さんは、和裁の仕事をするために17歳で故郷を離れ、上京した。

 元海軍軍人という、明治生まれの厳格な師匠のもとで4年間和裁の修行を積んだという伊藤さん。師匠から、和裁技術のほかに人として大切なことをたくさん教わったそうだが、中でも伊藤さんの人生に影響を与えたのは、師匠の説く「清掃道」ともいえる清掃哲学だった。

「気持ちを込めて」が伊藤流・清掃のモットー
特別な行事の時などは、和服で出社することも ©東日本環境アクセス

「始めに、『着物は人間修行だ』と教わりました。環境と気持ちが整っていなければ着物の仕事はできないという意味です。高額な反物を扱う以上、作業環境はいつもきれいで清潔でなければいけません。和裁は道具も細かいので、常に整理整頓を心がけなさいとも厳しく言われました。あと、手荒れは反物を傷める重大な原因になるので、いつも手は美しく保ちなさいと言われました」

 きれい好きのご両親と、「清掃道」を徹底的に叩き込んでくれた師匠。両者の存在が、伊藤さんの中に清掃への真摯な思いを育てていった。

手も姿勢も美しい伊藤さんの胸には、上級指導者の証「SV」を示すバッジが光る