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新聞販売の闇――「押し紙」偽装で読者データを改ざん

販売部数の偽装は「詐欺」という犯罪的要素を孕んでいる

2018/03/19

 そんな朝日新聞について毎日新聞社の元担当員は裏事情を述べる。

「公査で生データを出すなんて朝日新聞だからできること。毎日新聞の販売店は5割が『残紙』なんて珍しくないし、ひどい販売店では7割もある。ウチはとてもじゃないが生データは出せません」

「残紙」が積まれた朝日新聞販売店

 ちなみに「残紙」というのは読者に配達されず販売店に残っている新聞を指す業界用語だ。「押し紙」と同義語だが、「押し紙」は独占禁止法違反に該当するので、違法性を粉飾するために敢えて「残紙」や「予備紙」と言い換えているのだ。

 各新聞社や販売店によって残紙の量や割合は様々だが、いずれにせよ、部数の偽装がまかり通っているのは、日本ABC協会の公査をクリアしているからだ。

 部数公査における読者データの改ざんについて当事者に問い合わせた。デュプロ社は〈弊社内で調査を実施する予定です〉との方針を示した。毎日新聞社は〈担当員が販売店に読者データを改ざんするよう指示することはありません〉と否定した。日本ABC協会は〈販売店には、日常業務の配達数、発証(売上)数を示して頂くことをお願いしております〉と言う一方で〈公査の主たる目的は本社から販売店への送り部数(到着部数)の確認です〉とし、販売店のデータ改ざんについてはノーコメントだった。つまり、日本ABC協会の公査は、読者に配達されずに廃棄される新聞の存在を調べるものではなく、販売店に大量の残紙がある実態に即していない。

 データの改ざんは論外だが、実態に迫ろうとしない公査が「折り込み広告手数料の詐取」にお墨付きを与えていることについて、日本ABC協会は猛省すべきではないか。

「折り込み」で税金を詐取?

 2017年、千葉県印西市役所で、新聞の部数偽装問題がさざ波を立てた。ある市議が市議会で追及したからだ。なぜ自治体と新聞の部数偽装がからむのかといえば、自治体の発行する広報紙など税金で作成した刊行物を新聞に折り込んで配達しているからだ。

 折り込み広告が詐欺的要素を孕んでいると前述したが、押し紙を含めた部数で自治体の刊行物を提供しているなら、税金をドブに捨てているのと同じである。また、廃棄分の刊行物の印刷代金も本来は必要のない支出になる。

 この問題を追及したのは山本清印西市議(54)=無所属。現在は地元で学習塾を営んでおり、2001年まで朝日新聞記者をしていた。

「朝日新聞社に在職中も配達されない新聞が販売店に積まれている話を小耳にはさんだことがあり、頭の片隅に残っていたんです」

 議会で取り上げようと思うに至ったきっかけは自身の体験だった。

「私は市会議員としての政策チラシや学習塾の生徒募集のチラシをかなりこまめに作成しており、自分自身でニュータウンエリアのマンションに早朝ポスティングしていました。10年近くポスティングを続けていると、郵便受けに新聞の入っていない家庭が随分増えたなあと新聞離れを実感していたんです」

 印西市は広報紙「広報いんざい」を新聞に折り込んで市民に配達している。山本議員が折り込み部数を調べてみると、過去10年ほどは2万5000部〜2万6000部で推移しており、大きな変化はなかった。

印西市の広報紙「広報いんざい」

 新聞の読者数は落ち込んでいるのに折り込み部数が変わらないのはおかしい――。

 そう思った山本議員が折り込み部数の根拠を市に問い合わせると、業務委託している広告代理店が市内の新聞販売店から必要部数の申告を受け、市は申告に従って部数を提供しているだけだという。販売店が押し紙も含めて折り込み広告の必要枚数を申告するのが、“業界の常識”だと知った山本議員は、これは税金の詐取という重大な問題ではないか、と思い始めた。

 印西市が発行する刊行物で新聞に折り込んで配布しているものは幾つかある。例えば2016年度では最も多いのが「広報いんざい」で月2回発行。1部当たりの折り込み手数料は、8ページが7.38円、12ページが10.79円、14ページが11.07円(いずれも税抜き)。次が「議会だより」で年4回発行。その他には、「いんざい保健センターだより」が年1回、「いんざい産業まつり」の案内チラシが年1回。2016年度は参院議員選挙、千葉県知事選、印西市長選の選挙公報も折り込まれている。