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仮想通貨で育成失敗 森金融庁長官3年目の挫折

2018/03/16
部下への厳しさでは定評 ©文藝春秋

 金融庁は8日、仮想通貨交換業者7社に対して業務停止命令を含む行政処分を下した。

「処分庁から育成庁へ」を掲げてきた森信親長官(61)率いる金融庁は昨年4月に改正資金決済法を施行。世界に先駆けて、仮想通貨交換業者に登録制を導入した。「新しい金融の潮流を育てる」という森長官の方針を受け、昨年8月には庁内に「仮想通貨モニタリングチーム」を設置し、仮想通貨交換業者の登録審査に乗り出した。

 ところが、コインチェックの巨額資金流出事件が勃発する。コインチェックは「みなし」業者にもかかわらず、テレビCMを流すなど大々的に宣伝を展開し、客を集めた。法施行前から事業展開していた業者は、金融庁に登録を申請すれば、営業を継続できるという「みなし規定」に基づいたものだった。

 さらに、金融庁のお墨付きを得たはずの「登録」業者2社も処分を受け、規制強化は待ったなし。顧客の資産を預かるにもかかわらず、簡単に営業を認めてきた金融庁の審査の甘さを、業者に付け込まれた格好だ。金融関係者はこう首をひねる。

「もともと仮想通貨はマネーロンダリングに利用されることから、国際的に問題になるのは必至と見られていた。実際、今月のG20でも仮想通貨の規制強化が俎上に載せられる見込みです。森長官はなぜあんなに前のめりだったのか」

 異例の在任3年目に突入した森長官だが、ここにきて、打ち出した施策の停滞が目立っている。

 地方創生の起爆剤として期待した地域銀行の再編は、公正取引委員会の審査が通らず思うように進んでいない。森長官がその独自の経営を高く評価していたスルガ銀行は、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」に絡んでずさんな融資を行っていたことが発覚した。

 一方、金融庁は庁発足以来の抜本的な組織改編を行い、今年夏に検査局を廃止する。

「だが、仮想通貨業者や地域銀行は問題だらけで、検査官は出ずっぱりの状態。本当に検査局を廃止して大丈夫なのか」(金融庁関係者)

 麻生太郎財務相と菅義偉官房長官の覚えめでたく、留任を続けてきた森長官だが、官による「民の育成」はそう簡単ではなかった。