昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

父親は“要注意人物” 5歳女児虐待死はなぜ防げなかったのか

「自宅より児童養護施設の方が好き」――。東京都内の自宅で暴行を受け、病院で死亡した5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんは生前、関係者にそう話していたという。警視庁捜査一課は3日、結愛ちゃんを虐待したとして、傷害容疑で父親の船戸雄大容疑者(33)を逮捕した。警視庁担当記者の話。

「事件が発覚したのは2日。結愛ちゃんが息をしていないのに母親(25)が気付き、船戸容疑者が119番通報しました。体に複数のあざがあったことから警視庁が事情を聞くと、数日前に『しつけ』と称して殴るなどしたことを認めたため、傷害容疑で逮捕。今後は傷害致死容疑を視野に捜査を進めます」

 結愛ちゃんは母親の連れ子で、1歳の弟がいた。一家は1月に香川県から東京都目黒区に引っ越してきたばかり。だが、目黒区を管轄する品川児童相談所(児相)には、香川県側から船戸容疑者が要注意人物であることが伝わっていた。

結愛ちゃんがかつて住んでいた香川県のアパート ©共同通信社

「香川県にいたころから虐待を繰り返していたのです。2016年12月に外でうずくまっていた結愛ちゃんを近所の住民が見つけ、児相が一時保護。翌年2月には傷害容疑で県警が書類送検。さらに5月にも同じ傷害容疑で書類送検。7月に一時保護が解除されて間もない8月には、またも病院があざを発見して児相に知らせています」(同前)

 品川児相は一連の経緯を引き継ぎ、今年2月9日に自宅を訪問したが、母親が「娘は不在」として確認はかなわず。当時、すでに体重は激減していたとみられるが、悲劇はその後間もなく起きた。

送検のため警視庁碑文谷署を出る船戸雄大容疑者 ©共同通信社

 児相はじめ関係各機関の連携、権限については、悲惨な虐待事件が起こるたびに仕組みが見直されてきた。警察と児相の連携の緊密化が図られ、児相の立ち入り権限の強化も進んだ。今回、情報の伝達に断絶はなかったが、それでも虐待は防げなかった。

 警察関係者は「どんな制度にも隙間がある。それを埋められるのは、人だ。人身安全事案は人間関係とのバランスで、どこまで踏み込むか、ギリギリの判断の連続。その核心は保護や逮捕など、身柄の隔離にある」と指摘する。

 香川で2度目の傷害事件が起きた時点や、昨年8月の病院通報後、あるいは今年2月の訪問時に児相や警察がもう一歩踏み込んだ対応をできなかったか。検証が待たれる。