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「住みたい街ランキング」を8年前と比較してみて驚いた

下北沢、代官山は圏外へ、東急線も軒並みダウン、そのわけは……

2018/03/20
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恵比寿、品川、池袋、新宿……JRのターミナル駅がベスト10を独占

 元気なJRの駅の特徴はターミナル駅であることだ。ベスト10に入っている駅では「浦和」を除く9駅が他路線との乗り換えが可能なターミナル駅だ。都心居住と言われる中、「恵比寿」や「品川」「池袋」「新宿」「目黒」といった都心ターミナル駅のみならず、「横浜」や「武蔵小杉」「大宮」「浦和」といったエリアを代表する街周辺に人気が集中していることが明確に示されている。

池袋、新宿、恵比寿、品川、目黒……JRのターミナル駅が続々ベスト10入り ©iStock.com

自然やファッションよりも「交通利便性」

 またJRが湘南新宿ライン、上野東京ラインといった首都圏の南と北を縦貫する乗り入れ路線を開通させたことは、人々の「住みたい街」の意識に大きな影響を与えたものと考えられる。人々はかつてのように自然環境が豊かな郊外や、お洒落なブティックがある街というよりも「交通利便性」に対して圧倒的な支持を与えるようになっているのである。

 人気のJR路線だが、不人気路線もある。JR中央・総武線だ。「吉祥寺」や「立川」、大学の誘致で活性化した「中野」などを除くと、「高円寺(21位→55位)」「千葉(27位→53位)」「三鷹(17位→38位)」のみならず、「荻窪(24位)」「阿佐ヶ谷(81位)」「国分寺(91位)」「国立(117位)」なども人気が低下傾向にある。

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なぜ中央・総武線が不人気なのか?

 中央・総武線は東京の東西を貫く重要な幹線であるが、東西を走るだけで南北を結ぶ路線がないため、ターミナル駅が形成されにくく、住宅が郊外へ拡張を続けている間は沿線住民が加速度的に増加してきたのが、都心居住の進行とともに、その「一本槍」の路線が人気を失った原因とも考えられる。同じことは東京の西へ西へと延びていった京王線沿線でも見られる現象である。

 またこうしたランキングとは無縁とも思われる路線もある。京浜急行線、京成線、東武線、西武線などかつて多くのサラリーマンが住宅を求めた路線で上位にランクインする駅がほとんど見当たらない。また駅が地下にあり駅前地区が形成されにくい地下鉄は、本来、駅が評価されにくい構造にあるが、その中でも都営地下鉄沿線の駅は今回発表の166の駅に1駅もランクインしていない。

住みたい自治体ランキングと全くリンクしていない不思議

出典:リクルート

「住みたい街ランキング」調査ではあわせて「住みたい自治体」ランキングも掲載している。このランキングで驚かされるのは、自治体ランキングと駅名ランキングとが全くリンクしていないことだ。ベスト5を占めるのはいずれも都内の行政区だが、このうちの港区、世田谷区、文京区には「住みたい街」ベスト20に該当する街は存在していないことになる。

 住みたい街は、毎日の通勤が便利な街、でも本当は港区や世田谷区といった「ステータス」が欲しい。人はいつの世でもわがまま勝手でいい加減なものだ。ちなみに私はどうだろうか。平日は絶対に利便性の良い都心に住みたい。そして休日は海の見える郊外で過ごしたい。あっ、やっぱりわがまま勝手である。

「住みたい街ランキング」を8年前と比較してみて驚いた

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