昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

森岡 英樹
2016/07/01

格差は拡大せず!?
日銀黒田総裁は東條英機か

source : 週刊文春 2016年7月7日号

genre : ニュース, 経済

就任4年目に入った黒田総裁
Photo:Kyodo

 英国のEU離脱が決まった24日夜、麻生太郎副総理兼財務大臣と日銀の黒田東彦総裁は異例の共同談話を発表し、急激な円高に対して市場介入を辞さない姿勢を示した。

「これ以上円高株安が進めば、アベノミクスは絶体絶命。そこで為替介入や円安誘導を狙った日銀の追加緩和策を打ち出さざるをえないと見られています」(市場関係者)

 黒田総裁は、質・量・金利の三次元でいくらでも緩和する手段はあると強調する。

 だが、実際には手詰まりだ。

「量」は国債の年間発行額とほぼ同額を市場から買い入れている。これ以上の買い増しは財政ファイナンスとの批判は避けられない。

 マイナス金利はほとんど効果がなく、銀行や預金者の反発が強い。さらに拡大すれば、心理的に景気を冷やすとの懸念が高まっている。

 となれば、「質」しかない。買い入れ対象を、財投債や地方債、資産担保証券、円安を促す外債にまで広げるしか手がないとの見方が、市場関係者の間で有力だ。

 2013年3月に就任した黒田総裁は、「2年で2%の物価上昇」を目標に掲げ、異次元緩和を行った。だが、いっこうに達成される気配はないまま、円安は逆回転を始め、2013年の就任時近くまで円高が進む。

 それでも、黒田総裁は強気だ。6月20日に開催された慶応大学の講演会では、「2年で2%」目標は、「道半ばだが、プラス効果は十分あった」と強調した。

 さらに、学生から「大規模な金融緩和で富裕層の資産価値が膨らむ一方、労働者の賃金は伸びていない」と指摘されると、失業者が減って雇用者の総所得が増えたことを理由に「日本で(所得格差の拡大が)起こっているとは思っていない」と否定した。

 だが、実際の労働市場では非正規雇用が増加し、年収200万円以下のワーキングプアが年間20万人近く増えている。

 ついに、日銀内部では、黒田総裁を戦時中の東條英機首相になぞらえ始めた。

「一発逆転を狙って、奇襲攻撃を敢行。当初こそ戦果をあげたが、出口戦略がなく、無条件降伏に追い込まれた。今の日銀とそっくりだ」(日銀関係者)

 離脱ショックは、黒田総裁の大きな分岐点になるだろう。