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大腸がんも最初の病院選びが肝心――大腸がんの名医 奥田準二医師

2018/06/07
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成績の差はボリュームの差

 また、医師側も自分の技術、知識、経験を客観的に見て、どこまでなら自分で手術できるかを判断することが重要です。手術をするなら、自分たちの力量できちんと手術できる患者さんに限定すべきです。手に負えない難しい患者さんは無理をせず、信頼できる医師に紹介すべきでしょう。紹介した先の病院で手術を見学して、ノウハウを得てから徐々に難しい手術を行っても遅くありません。

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――患者側も医師側も、病状を見極めることが大切ということですね。それにしても、どうして成績に差が出るのでしょうか。

 それはボリュームの差、つまり手術数によるところが大きいと思います。やはり、たくさん手術をすればするほど習熟度が上がり、成績がよくなるのは間違いありません。実は20年ほど前、大腸がんの手術は、どの大学病院でも年間100例ぐらいで、差はあまりありませんでした。私たちが腹腔鏡手術を始めた1993年頃、大阪医大病院でも大腸がん手術は年60〜70例ほどでした。

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 ところが昨年(2015年)の当院の大腸がん手術は512例と、当時の10倍近くになっています。これは大阪府内では断トツで、2番目の病院の約2倍です。つまり、質の高い手術ができる病院に、患者さんが集中するようになったのです。とくに腹腔鏡手術が普及してからは、地域の医師も患者さんも、手術する病院を学閥、派閥に関係なく、吟味して選ぶようになりました。

 それに、これだけの手術数をこなそうと思えば、合併症や再発を減らして平均入院日数を短くし、入院ベッドをうまく回転させなければなりません。つまり、手術数が多いということは、合併症や再発の少ない質の高い手術ができている証でもあるのです。

――患者側のニーズもあって、大腸がんでは腹腔鏡手術を導入する病院が増えましたが、これを危険だと指摘する声もあります。

 確かに心配な面もあるのは否定できません。腹腔鏡手術の黎明期には、開腹手術の権威の先輩方から厳しい批判を受け、それを克服すべく努力を続けてきました。ところが最近は、どの病院も普通に腹腔鏡手術をするようになったので、学会でもそのこと自体を批判する声は少なくなってきました。それだけに、ちょっと野放し状態になっているかもしれません。開腹であろうと腹腔鏡であろうと、未成熟な腕の外科医の下で受ける手術は危険ですから、外科医も慢心せず、技術力を高める努力を続けることが大切だと思います。