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「乳がんをきっかけに始めたヨガでことりと眠れるように」――内澤旬子、乳がんを語る #1

内澤旬子さんインタビュー

2018/04/03

短時間でも普通に眠れるようになりたい、とヨガを始めました

──その後に、またすぐしこりができたんですね。

内澤 はい。2005年5月に1回目の部分切除をして8月に今度は右胸にしこりが見つかり、10月に2度目の切除手術を受けました。それでも残っている乳腺には左右ともどもまだがんの芽が散らばっていて、放っておくとまた大きくなる可能性が高いと言われ、ホルモン療法を受けることにしたのですが、この副作用が結構きつくて大変でした。

 

──どんな副作用があったのですか。

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内澤 私の場合は、「のぼせ」に加えて、だんだんと聴覚がおかしくなっていったんです。これまで気にならなかった生活音まで気になるようになって、一日中だるさも取れず、起き上がれないのに熟睡できない、という半分寝たきり状態が続きました。とにかく眠りたい、せめて短時間でも普通に眠れるようになりたい、とヨガを始めました。

体力がついて体温もあがり、なぜかだんだんと仕事がくるように

──それまで、ヨガをやったことはあったんですか?

内澤 ヨガは初めてでした。先生の言うとおりに呼吸を整えて、静かに身体を動かしていくだけで、激しい動きもほとんどないのに、柔軟体操を終えたように気持ち良く疲れて、すごくよく眠れるようになりました。布団に入った瞬間にことりと。さらに、続けているうちに体幹が整ってスタイルもよくなったんです。体力がついて、体温もあがり、元気になるとともに、なぜかだんだんと仕事がくるようになりました。

 

──副作用もなくなりましたか?

内澤 残念ながら、それは解消されませんでした。身体は元気に動くようになったのですが、聴覚障害とのぼせは日に日にひどくなっていました。このままホルモン療法を続けるのはムリだと思い、主治医の先生に「もうノルバデックスを飲むのはつらいのでやめたいです」と言いました。

 先生はもともと、残っているがんの芽を全部切り取ってしまいたいとおっしゃっていたので、すぐに乳腺全摘出の話になりましたが、そこからがまた大変でした。

うちざわ・じゅんこ/1967年生まれ。文筆家、イラストレーター。日本・世界各国を歩き、屠畜、印刷、建築などさまざまなジャンルを取材したイラストルポを発表している。2011年に『身体のいいなり』で講談社エッセイ賞受賞。『センセイの書斎 イラストルポ「本」のある仕事場』『世界屠畜紀行』『捨てる女』『漂うままに島に着き』など著書多数。

写真=佐藤亘/文藝春秋
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「乳がんをきっかけに始めたヨガでことりと眠れるように」――内澤旬子、乳がんを語る #1

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