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『映画ドラえもん』を見物した結果、自分の心が濁っていることを知る

わたくし、山本一郎の感想

2018/03/22

genre : エンタメ, 映画

 私はほとんど映画を観ません。

 一昨年ぐらいに熱を出した長男が咳込みながらも「スター・ウォーズを観たい」というので、自宅のテレビで寝ながら一緒に鑑賞したぐらいでしょうか。少し前まで映画やらネット動画やらのコンテンツの製作委員会の仕事をしておきながら、映画とかにはまーーったく興味ないんですよね。好きな人は好きで構わないんですけど、わたしゃその映画が「なんで人に好評で興行収入が上がるのか」に興味あるだけなんでねえ……。

ややネタバレ的に感想を原稿にしてみようと思い立つわけです

 しかしながら、日ごろお世話になっておる筋から『映画ドラえもん のび太の宝島』チケットが回ってきたのを知った拙宅山本家三兄弟、喜び勇み、全力で「行くーーー!」となったわけであります。これは見物に連れて行かないわけにはいきますまい。ということで、まだちょっと体調の芳しくない家内とも連れだって映画館に行くわけですよ。

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 あーー、仕事抜きの完全プライベートでいく映画館とか、5年か6年ぶりではないだろうか。そんな感動をよそに、映画は粛々と始まるんですが、こりゃかなり苦労して映画にしたんだなあという雰囲気が立ち込めて来ます。製作者はよく頑張った。感動した。一方で、物語的には気になることが多々出てくるので、ややネタバレ的に原稿にしてみようと思い立つわけであります。何しろ、いきなり出木杉さんが小説『宝島』の朗読を始めるわけなんですよね。そんな機会をくれた出木杉さんはのび太と一緒に冒険行ったりしないんですか。個人的に、ジャイアンやスネ夫を連れて行くより、出木杉さんが一人いたほうが冒険にはよっぽど役立つと思うんですよ。いろんな映画に出ては冒険が上手く行って武勇伝をジャイアンやのび太が語り合って友情を深めているのを、出木杉さんは聞きながらどう思っているのか知りたいのです。疎外感を覚えるのではないかと思うんですよね。どう考えてもお前らよりも俺のほうが優秀だしイケメンだし性格もいいのに貴重な体験をさせてもらえない、のび太やドラえもんが連れて行ってくれない、友達のようでいて実はその辺のモブ小学生同様の扱いで、物語の導入だけチョイ出演して終わりという、非常に残念な舞台回し的役割で放置される、可哀想な出木杉さん。引き立て役ですらなく、単にそこにいるだけの出木杉さんの寒い立ち位置に同情を禁じ得ません。私が出木杉さんの親なら一緒に泣く。泣かないけど。

 有能なはずなのに不当な扱いに貶められている出木杉さんの置かれた悲しい立場にひとしきり同情しブチ切れたあと、鼻からカルボナーラという「きっこのブログ」大先生の歴史に残る名啖呵が切り出され、突然木造帆船に乗って川を下り旅に出るのび太一行。ここでまたブチ切れですよ。お前ら船舶免許はどうした。一級河川で登録なく係留地もない木造帆船をどうどうと乗って下って東京湾から宝探しとかあり得ん。摘発されろ。いますぐにだ。子どもだからって、やっていいことと悪いことがあるだろ。このコンプライアンスが大事なご時世に、大手を振って違法行為となりかねない遊びはけしからんと思うのです。猛省を促したい。そのように思うわけであります。