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連載尾木のママで

尾木 直樹
2018/03/22

福島から転校した小学生が「菌」と呼ばれ……「原発いじめ」を考える――尾木ママ

尾木のママで

イラスト 中村紋子
イラスト 中村紋子

 東日本大震災から7年目の3月11日。いじめ問題根絶を目指す組織の立ち上げイベントがあり、赤坂に駆け付けました。3.11の日に命の問題であるいじめ問題を深く考え合う場になったわ。

 ボクは「原発いじめを みんなで考える」というテーマで講演。2016年度の全国小中高校、特別支援学校で認知されたいじめ件数は、32万3808件で過去最多。一方で、2017年3月までに福島県から県内外に避難した小中高校生約1万2000人へのいじめは199件、そのうち震災や原発事故に直接言及したとされるいじめはたったの13件ですって。実態からほど遠い数字ね。子供達が原発いじめを訴えられず、抑圧されている様子が窺える。

 福島から転校してきた小2の男子が「菌」と呼ばれ、後に「賠償金あるだろ」と、1か月に約150万円も取られるなどした横浜の原発いじめ。昨年2月、被害男子のご両親が出したコメントの「原発いじめというくくりで大きく取り上げられましたが、今回の息子の件はどこでも起こりうる『いじめ』です」という発言は重い。原発いじめは、原発事故により福島から避難している児童生徒に対するいじめという特殊な面もあるけれど、弱い立場の人をストレスの捌け口にする、普遍的ないじめの構造と重なる。大人社会の理解不足や、想像力・共感力の欠如を反映しているのではないかしら。

 イベントでは他に、いじめ防止に取り組む校長、研究者、文科省や厚労省の課長らによる討論も開催。30~40人の学級規模では一人ひとりの心にじっくり向き合う教育はできない。日本の教育現場の「一斉主義」が、多様な個の受容を困難にし、いじめの温床を生んでいると文科省の課長も指摘した。いじめ問題をどう解決していくか。子供のみならず大人こそ、向き合う姿勢が厳しく問われるわね。