文春オンライン

2年連続4人目の逮捕 なぜ韓国の大統領は必ず不幸になるのか

朴槿恵逮捕から1年も経たぬうちに……

2018/03/23

 ついにというか、やはりというか……。

 3月22日夜、韓国の李明博元大統領(77)が逮捕された。

 元大統領は内乱罪でない限り拘束はしないといわれているが、犯罪の重大性や証拠隠滅の怖れがあるとして身柄が拘束された。

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 3月14日に検察に出頭して調査を受けてから9日。6月に行われる地方選挙での有権者への影響を考慮して、とも見られているが、「積弊清算」(過去から積み上げられた弊害を清算すること)の“本願”逮捕への検察の執念も感じられた。

 これで韓国での大統領経験者の逮捕は全斗煥、盧泰愚、朴槿恵前大統領に続いて4人となり、検察の調査を受けた盧武鉉元大統領を入れれば5人目となる。なにより、朴前大統領が逮捕(2017年3月31日)されてから1年にも満たない間に、過去の政権のトップ2人が立て続けに逮捕されるという異例の悲劇が、韓国の歴史にまた刻まれることにもなった。

警察官が警備する李元大統領の自宅前 ©筆者撮影

「MBは逮捕されて裁かれるべき」

「文在寅大統領が掲げた『積弊清算』の集大成といった感じでしょうか」(韓国全国紙記者)

 李元大統領の逮捕は、文政権が誕生してからまことしやかに囁かれてきた。

 昨年5月の大統領選挙前に話を聞いた文大統領の支持者の中には、「行きすぎは禁物」と「積弊清算」を牽制していた人でも、「MB(李元大統領のイニシャル)は逮捕されて裁かれるべき」と口を揃えていた。その理由はいずれも「秘密資金作り」と「盧武鉉元大統領を自殺に追い込んだ罪」だった。

 李元大統領にかけられた容疑は12件。

 核心的な容疑は、1987年、現代建設の代表理事だった時代に設立した自動車部品会社「ダース」(当時の社名は「テブ機工」)をめぐるものだ。同社は、当時の鄭世永・現代自動車会長が李元大統領の現代グループへの功労から設立を勧めたといわれ、李元大統領自ら資本金3億9600万ウォン(約3920万円)を出資して立ち上げた。経営は実兄や夫人の兄弟、そして最近では長男が総括していたといわれるが、ソウル中央地検は実際の所有者は李元大統領だとし、懇意の経営陣を置くことで1994年からソウル市長在任中を含めた2006年まで339億ウォン(約33億5000万円)の裏金を同社で蓄えた横領・背任容疑をあげた。

 また、同社の米国での訴訟費用としてサムスンに60億ウォン(約6億円)を肩代わりさせた見返りに当時収監されていた李健熙会長を特別赦免にしたという収賄容疑、さらに国家情報院の特別活動資金17億5000万ウォン(約1億7100万円)を上納させて受領した疑い、そして民間企業などから35億5000万ウォン(約3億4700万円)を受け取っていた収賄容疑などがかけられている。収賄額だけで113億ウォン(約11億円)に上る。

「フォトライン」という名の“社会的制裁”

 3月14日にソウル中央地検に出頭した李元大統領は、韓国で屈辱的とされる「フォトライン」に無表情のまま立ち、「国民に心配をかけて申し訳ない」と述べた後、「今回のことが最後になってほしい」と用意した原稿を淡々と読み上げた。このフォトラインは、1993年に現代グループの創業者である鄭周永氏が選挙法違反で検察に出頭した際、取材陣の混乱を避けるために検察の入り口前に設けられたのが始まりとされ、ここに立つことは“社会的制裁”を受けたことを意味する。

フォトラインに立つ李元大統領 ©getty